
非常災害対策と避難訓練、実施と記録の残し方をやさしく整理
「避難訓練、そろそろやらないと」——カレンダーを見てふとそう思いながら、目の前の請求や書類に追われて、また先延ばしになってしまう。非常災害対策計画も、いつのまにか古い版のまま棚に眠っている。そんな状態に、少し後ろめたさを感じている方は多いのではないでしょうか。
でも、災害への備えは「立派な計画を一気に完成させる」ことがゴールではありません。決められたことを、決められた回数、記録に残しながら積み重ねていく——それが現場の安心につながります。今日は、非常災害対策と避難訓練を「事務がどう回すか」という目線で、一緒に順番に整理していきましょう。
結論:まず (1) 自施設の非常災害対策計画が最新か、(2) 避難訓練を年に必要な回数実施できているか、(3) 訓練の記録がきちんと残っているか、の3点を確認します。回数や様式、水害・土砂災害への備えの要否は、施設種別・所在地・所轄消防署・自治体で異なります。運営基準・消防計画・地域のハザードマップで必ず確認してください。
まず確認したい3つのこと
慌てて訓練の日程を組む前に、次の3つだけ先に押さえると、抜け漏れなく進められます。
- 計画はあるか・最新か:非常災害に関する具体的計画(非常災害対策計画)と、消防法に基づく消防計画が整っているか。連絡先や職員体制が実態と合っているか。
- 訓練の回数は足りているか:今年度、避難・救出などの訓練を必要な回数実施できているか。次はいつ行うか。
- 記録が残っているか:過去の訓練について、日時・想定災害・参加者・内容・気づきが記録として残っているか。
この3つがはっきりすると、「何が足りていて、何をこれからやるか」が見えてきます。
何が起きているか:備えは「計画」と「訓練」と「記録」の3点セット
介護事業所には、運営基準として非常災害に関する具体的計画を立て、定期的に避難・救出その他の訓練を行うことが求められています。これに加えて、消防法に基づく消防計画の作成・届出や、消火・避難訓練の実施が必要になる施設もあります。
さらに、施設が浸水想定区域や土砂災害警戒区域にある場合は、水防法・土砂災害防止法に基づく避難確保計画の作成と訓練が別に義務づけられることがあります。自施設がどの区域にあるかは、市区町村のハザードマップで確認できます。
つまり、根拠となる法令が複数あり、それぞれで求められる中身が少しずつ違う、というのが「わかりにくさ」の正体です。だからこそ、一度「うちの施設は何が求められているのか」を整理しておくと、毎年ぐっと楽になります。回数や様式は所轄消防署・指定権者で異なるため、最新の案内で確認しましょう。
手順は小さく分けて進める

一度にすべてを完璧にしようとすると、かえって手が止まります。次のように区切ると進めやすいです。
- 計画を出してくる:非常災害対策計画・消防計画の現物を探し、最終更新日と内容(緊急連絡網、避難経路、役割分担)が今の体制と合っているか確認する。
- 足りない情報を差し替える:職員の異動で連絡網が古くなっていないか、近隣の協力先や消防署の連絡先が変わっていないかを直す。
- 今年度の訓練予定を決める:必要な回数と時期をカレンダーに落とし、夜間想定・日中想定など場面を分けて計画する。
- 記録の様式を用意する:訓練のたびに同じ様式で残せるよう、記録シートのひな形を1枚作っておく。
基本の計画書がすぐ出てこないときは、まず「どこにあるか」の所在確認だけ先に済ませ、中身の見直しは後日に回して大丈夫です。
避難訓練の記録に残しておきたい項目
訓練は「やった」だけでなく「記録が残っている」ことで、いざというときの見直しにも、指導時の説明にも役立ちます。次の項目を1枚にまとめておくと安心です。
- 実施日時(開始・終了)と天候
- 想定した災害(火災/地震/水害/土砂災害など)と発生場面(日中・夜間・職員が少ない時間帯 など)
- 参加者(職員・利用者の人数、可能なら地域住民や協力者の参加有無)
- 訓練の内容(通報・初期消火・避難誘導・安否確認・引き渡し など、実施した項目)
- 所要時間と、避難完了までにかかった時間
- 気づき・課題(うまくいかなかった点、次回への改善点)
- 次回に向けた改善策と担当
施設系のサービスでは、訓練の実施にあたり地域住民の参加が得られるよう連携に努めることが求められています。すぐに実現しなくても、自治会や近隣事業所へ声をかけた記録を残しておくと、努力の跡が見えるかたちになります。
忙しい中で回すための工夫
- 年間計画に最初から入れておく:期の初めに研修や委員会と一緒に訓練日を仮置きしておくと、後回しになりにくいです。
- 場面を年ごとに変える:毎回同じ「日中の火災」だけでなく、夜間想定や地震・水害など、少しずつ想定を変えると実践的になります。
- 写真を1〜2枚残す:避難誘導の様子や集合場所の写真は、記録の補足として説明しやすくなります(利用者が写る場合は取り扱いに配慮)。
- ひな形を使い回す:記録シートを毎回ゼロから作らない。前回のシートをコピーして日付と内容を書き換えるだけにします。
確認チェックリスト
- 非常災害対策計画・消防計画の現物の所在を確認した
- 計画の緊急連絡網・役割分担が今の職員体制と合っている
- 自施設が浸水想定区域・土砂災害警戒区域に該当するかをハザードマップで確認した
- 今年度に必要な訓練の回数と時期をカレンダーに入れた
- 訓練の想定(火災・地震・水害・夜間 など)を場面ごとに分けて計画した
- 訓練記録のひな形(日時・想定・参加者・内容・気づき・改善策)を用意した
- 過去の訓練記録が残っているか、抜けている回がないかを確認した
- 地域住民・近隣への連携(声かけ)の記録を残す準備をした
- 回数・様式は所轄消防署/指定権者の最新案内で確認した
次回に向けて
災害への備えは、一度整えて終わりではなく、体制が変わるたびに少しずつ手直ししていくものです。今回「探すのに時間がかかった書類」や「連絡先が古かった箇所」をメモしておくと、来年の見直しがぐっと楽になります。日々の備えという意味では、自己点検チェックリストで普段から備える記事や、災害時に事業を止めないためのBCP(業務継続計画)の記事もあわせてどうぞ。

備えは、完璧を一度で作るものではありません。計画を最新にする、訓練を一回終える、その記録を一枚残す——そのひとつひとつが、いざというときに現場を守る力になります。今日は、計画の所在を確認するところまでで十分です。一つずつ積み重ねていきましょう。
制度と現場をつなぐ仕事があるから、介護の現場は止まらずに動いています。