事務室の机で、福祉事務所から届いた介護券と請求データを見比べながら、生活保護利用者の公費請求を落ち着いて確認している介護事業所の事務担当者

生活保護(介護扶助)の請求の流れと注意点を一緒に整理

「この利用者さん、生活保護なんだけど…請求どうすればいいんだっけ」。月初の請求作業で、生活保護を受けている方の分になると、いつもの流れと勝手が違って、ふと手が止まること、ありませんか。介護券というものが要るらしい、公費併用という言葉が出てくる、本人支払額がある人とない人がいる——聞いたことはあっても、いざ自分の目の前の一件になると、どこから手をつければいいのか迷ってしまう。その戸惑い、とてもよくわかります。件数が少ないぶん、毎月やるわけでもなくて、余計に思い出しにくいんですよね。

でも大丈夫です。むずかしそうに見えて、押さえるところは多くありません。まず「その方が介護保険の被保険者かどうか」で扱いが2つに分かれる——ここさえ分けられれば、あとは介護券を確認して、いつも通り国保連へ請求する流れにのせるだけです。今日は、生活保護(介護扶助)の請求の流れと注意点を、現場でつまずきやすい順に一緒に整理していきましょう。

結論:生活保護の利用者さんの介護サービス費は、「介護扶助」という保護の一種類でまかなわれます。事務として押さえるのは3つ。①その方が介護保険の被保険者かで、【介護保険+介護扶助の公費併用】か【全額を介護扶助でみる】かに分かれる。②請求には福祉事務所が発行する「介護券」の情報(公費負担者番号・受給者番号など)が必要で、③本人が負担する「本人支払額」が設定されている場合は、その分を利用者から徴収し、残りを公費として国保連へ請求する。金額・番号・本人支払額は福祉事務所(担当ケースワーカー)が決めるので、迷ったら事業所で判断せず、必ず介護券と福祉事務所の案内で確認しましょう。

そもそも「介護扶助」とは

まず言葉の整理から。生活保護には、生活扶助・医療扶助・住宅扶助などいくつかの「扶助」がありますが、そのうち介護サービスにかかる費用をまかなうのが「介護扶助」です。医療でいう「医療扶助」の介護版、とイメージすると伝わりやすいかもしれません。

大事なのは、介護扶助は現物給付が原則だということ。利用者さんが窓口でお金を用意するのではなく、福祉事務所が発行する「介護券」にもとづいて、事業所が国保連へ請求してお金を受け取る、という流れになります。ですから、生活保護の方の請求で最初に探すべきは、この「介護券」です。介護券には、公費の負担者番号や受給者番号、その月の本人支払額など、請求に必要な情報が載っています。

「いつもの介護保険の請求に、公費という一枚が重なる」——ざっくりこのイメージを持っておくと、身構えずに向き合えます。

まず分けたいのは、この2パターン

生活保護の利用者が介護保険の被保険者かどうかで請求が2つに分かれることを示した分岐の説明図
最初の分かれ道はここ――被保険者なら「併用」、そうでなければ「全額扶助」

生活保護の方の請求で迷う一番の理由は、人によって扱いが違うところにあります。でも、分かれ道は最初のひとつだけ。「その方が介護保険の被保険者かどうか」です。ここで2つに分かれます。

① 介護保険の被保険者である場合 →「公費併用」

65歳以上の方(第1号被保険者)や、40〜64歳で医療保険に加入している方(第2号被保険者)は、生活保護を受けていても介護保険の被保険者です。この場合は、

という形になります。これが公費併用(介護保険と生活保護の併用)です。つまり請求は、いつもの介護保険の給付費請求に、利用者負担分を公費(介護扶助)として上乗せするイメージ。国保連への請求では、介護保険と公費の両方の情報を1件の明細に入れて請求します。

② 介護保険の被保険者でない場合 →「全額を介護扶助」

40〜64歳で、医療保険に加入していない生活保護受給者の方は、介護保険の被保険者になりません(現場では「みなし2号」と呼ばれることがあります)。この場合、介護保険からの給付はなく、かかった費用の全額を介護扶助でみることになります。

要介護認定の手続き自体は介護保険と同じように行われますが、給付は介護保険ではなくすべて介護扶助から。ですから請求も、介護保険分はなく、公費(介護扶助)のみで立てる形になります。ここを取り違えると請求がまるごと通らないので、「この方は被保険者か、みなし2号か」を最初にはっきりさせておくのが肝心です。

どちらのパターンかは、介護券や被保険者証、福祉事務所からの案内で確認できます。わからなければ、担当のケースワーカーに一本確認するのがいちばん確実で早いです。自分だけで判断しなくて大丈夫、これは「聞いていい」ところです。

請求の流れ:この順で進めると迷いません

パターンが分かれば、あとは順番にたどるだけです。

  1. 介護券を確認する:福祉事務所から発行される介護券(月ごと・利用者ごと)に、公費負担者番号・受給者番号・その月の本人支払額・給付の範囲などが載っています。まずこれを手元にそろえます。届いていない・見当たらないときは、請求前に福祉事務所へ確認します。
  2. 本人支払額の有無を見る:介護券に本人支払額が記載されている場合、その金額は利用者さんから徴収し、公費で請求するのは残りの部分です。本人支払額が0円(なし)の方もいます。ここは福祉事務所が収入等に応じて決めるので、事業所で勝手に増減させません。
  3. 公費の情報を請求ソフトに登録する:利用者情報に、生活保護の公費負担者番号・受給者番号を登録します。①の公費併用なら介護保険と公費の両方を、②の全額扶助なら公費のみを設定します。
  4. 国保連へ請求する(給付管理・実績記録票は通常どおり):ケアプランにもとづく給付管理や実績記録票の突合は、いつもの介護保険と同じ流れです。公費併用の場合も、給付管理票は介護保険のルールにそって作成します。
  5. 返戻・査定が出たら番号と本人支払額を見直す:もし返戻になったら、公費負担者番号・受給者番号の入力ミス本人支払額の取り違え被保険者区分(①か②か)の誤りが原因のことが多いです。あわてず、介護券と突き合わせて確認します。

とくに気をつけたいのが、本人支払額の扱いです。「本人からいくら受け取り、公費でいくら請求するか」を取り違えると、過不足が出て後から調整が必要になります。介護券の本人支払額を、そのまま素直に反映する——ここを丁寧にやるだけで、返戻の多くは防げます。

見落としやすい注意点

影響:正しく分けられると、請求も利用者さんも守れる

生活保護の請求のしくみを事務が押さえておくと、二つのいいことがあります。ひとつは、返戻や過不足を減らせること。被保険者区分と本人支払額さえ取り違えなければ、生活保護の請求は決してむずかしくありません。もうひとつは、利用者さんが安心してサービスを使い続けられること。請求がつまずくと、事業所にも利用者さんにも不安が及びます。事務が静かに交通整理をすることで、必要なケアが途切れずに届きます。

生活保護を受けている方は、暮らしのなかでいろいろな不安を抱えていることが少なくありません。その方が介護を安心して受けられる土台を、請求という裏方の仕事で支えている——それは、目立たないけれど、確かに人の暮らしを守っている仕事です。

明日やること

明日いきなり全部を完璧にしなくて大丈夫です。まずは、

  1. 自分の事業所に生活保護(介護扶助)の利用者さんがいるか、一覧で確認する
  2. その方の介護券を1枚開いて、「公費負担者番号・受給者番号・本人支払額」がどこに書いてあるかを自分の目で確かめる
  3. その方が①公費併用か、②全額扶助(みなし2号)かを、被保険者証や福祉事務所の案内で確認しておく

ここまでできれば、次の請求で手が止まりません。わからないところは、担当ケースワーカーに聞けば大丈夫です。

確認チェックリスト(請求前のセルフ確認)

全部を暗記する必要はありません。ここを外すと請求がぶれるという最低ライン(必須4つ)と、できれば見ておきたい任意3つに分けました。まずは必須4つから。

必須(ここだけは押さえたい4つ)

できれば(余裕があれば見ておきたい3つ)

よければ、こちらも

公費や利用者負担にまつわる請求は、あわせて見ると全体像がつかめます。施設の食費・居住費の軽減なら負担限度額認定証の確認と、補足給付の請求のしかたを一緒に、毎年夏に届く負担割合の確認は利用者負担割合証の確認と、請求への反映のしかたを一緒にをどうぞ。返戻が出て困ったときは国保連の返戻はなぜ起きる?よくある原因と対応手順を一緒にも一緒に読むと、原因を落ち着いて切り分けられます。

生活保護利用者の公費請求を無事に済ませ、片づいた机のそばで肩の力を抜いてほほえむ介護事業所の事務担当者

生活保護(介護扶助)の請求は、名前や言葉こそ身構えますが、「被保険者か・みなし2号か」で分けて、介護券のとおりに本人支払額を反映する——この一本の筋さえ通れば、いつもの請求とそう変わりません。今日この記事を読んだあなたは、次に生活保護の方の分が回ってきても、どこを見て、どこを確認すればいいかを、もう知っています。

制度のはざまにいる人ほど、請求がつまずけば暮らしに響きます。その入口を静かに整えて、必要なケアを途切れさせない——それは、現場の事務だからこそできる、あたたかい仕事です。

関連用語