
加算の算定漏れを防ぐ月次点検のしかたを一緒に整理する
月末、請求データを確定させたあとで「あの加算、今月ちゃんと載っていたかな……」とふと不安になること、ありますよね。要件も満たしているし、体制届も出している。それでも、明細に載せ忘れていれば、その分の報酬はまるごと取り逃してしまいます。しかも算定漏れは、返戻のように国保連から知らせが来るわけではないので、自分たちで気づかないかぎり静かに見過ごされていきます。
でも、算定漏れは「点検の順番」さえ決めてしまえば、毎月かなり防げるものです。今日は、加算の取りこぼしがなぜ起きるのかを整理したうえで、毎月決まった順で回せる月次点検の型を、現場で無理なくできる小さな手順に分けて一緒に見ていきましょう。
結論:加算の算定漏れは、①体制届を出している加算の一覧(=本来取れるはずの加算)→ ②今月の算定要件(人員・記録・計画書など)を満たしているか → ③今月の請求明細にその加算が載っているか、の三つを毎月同じ順で突き合わせると防げます。ポイントは「請求データを見てから加算を探す」のではなく、「取れるはずの加算リストを先に用意して、そこから漏れを探す」こと。単位数や算定要件は制度改正・地域・サービス種別で変わるので、最終的な可否は必ず最新の告示・お住まいの自治体の通知でご確認ください。
何が起きているか — 算定漏れは「返戻の逆」で気づきにくい
まず、算定漏れがなぜ見過ごされやすいのかを整理します。
請求のミスには、大きく二つの方向があります。ひとつは取りすぎ(算定要件を満たさないのに載せてしまう)。これは国保連の審査で返戻・過誤となり、事後に気づけます。もうひとつが取り逃し、つまり算定漏れです。こちらは、本来算定できる加算を請求に載せ忘れているだけなので、審査は通ってしまいます。返戻も来ません。だからこそ、自分たちで点検しないかぎり気づけないのです。
算定漏れとは、算定要件を満たしていて本来請求できる加算を、請求明細に載せ忘れて報酬を取り逃してしまうことです。書類上のミスというより「取れるはずのものを取っていない」状態で、事業所の収入に直接ひびきます。
やっかいなのは、あとから取り戻すのが簡単ではない点です。過去分は月遅れ請求などで一定期間はさかのぼれる場合もありますが、期限や条件があり、気づくのが遅れるほど取り戻しは難しくなります。だからこそ、その月のうちに気づける仕組みを持っておくことが、いちばんの防止策になります。責めるための点検ではなく、事業所が本来受け取れるものを、きちんと受け取るための点検です。
算定漏れが起きやすい三つのタイミング

毎月すべての加算を一から疑っていたら、時間がいくらあっても足りません。実は算定漏れは、「何かが変わった月」に集中しやすいものです。次の三つのタイミングを頭に置いておくと、点検の的を絞れます。
- 新規に算定を始めた月:体制届を出して算定を始めても、ソフトのマスタ設定や利用者ごとの反映が追いつかず、初月に載らないことがあります。
- 区分や体制が変わった月:加算の区分(Ⅰ→Ⅱなど)が変わった、対象サービスが増えた、といった月は、古い区分のままだったり新しい対象が反映されなかったりしがちです。
- 要件を満たさなくなった月:職員の退職・産休などで人員要件が欠けた月は、逆に「取れなくなった加算をそのまま載せている」取りすぎのリスクが出ます。取り逃しと取りすぎ、どちらも変化の月に起きやすいのです。
普段と同じ体制で流れている月は、ソフトが前月どおりに載せてくれるので大きくは崩れません。だから、変化のあった利用者・サービスを先に洗い出すのが、いちばん効率のよい点検になります。
月次点検の手順 — 「取れるはずのリスト」から漏れを探す

算定漏れを防ぐコツは、請求データを眺めて加算を探すのではなく、「取れるはずの加算リスト」を先に用意して、そこから漏れを照合することです。順番に見ていきましょう。あわてず、ひとつずつで大丈夫です。
手順1. 「体制届を出している加算」の一覧を作る
まず、自事業所が体制届を提出して届出している加算を、一枚のリストにします。加算の名称・区分・対象サービス・算定開始月をならべた、シンプルな一覧で十分です。これが「本来取れるはずの加算」の基準表になります。一度作れば、変更があったときに追記していくだけなので、毎月ゼロから作る必要はありません。届出内容は加算の体制届の出し方と提出期限の確認で整理した控えと突き合わせると確実です。
手順2. 今月「要件を満たしているか」を確認する
次に、その一覧の加算それぞれについて、今月の算定要件を満たしているかを見ます。人員配置、必要な記録(研修・会議・計画書など)、利用者ごとの算定条件——加算によって要件は違いますが、「今月、要件が崩れていないか」という視点で確認します。とくに前の章で挙げた「変化のあった月」は要注意です。要件を満たすなら取る、満たさないなら外す、という判断をここで済ませておきます。
手順3. 今月の請求明細に「載っているか」を照合する
最後に、要件を満たした加算が、実際に今月の請求明細(介護給付費明細書)にきちんと載っているかを一行ずつ照合します。リストにあるのに明細にない加算があれば、それが算定漏れの候補です。逆に、要件を満たさないのに載っている加算があれば、取りすぎの候補になります。ソフトが自動で載せてくれていても、リストと明細を突き合わせて初めて「漏れがない」と言えるので、ここは目視で確認しておくと安心です。
つまずきやすい所、先に知っておくと安心なこと
点検を回すうえで、ハマりやすい所を先にお伝えします。どれも「知っていれば防げる」ものです。
- ソフト任せの初月漏れ:新規算定の初月は、ソフトのマスタ設定や利用者への反映が間に合わず載らないことがあります。算定開始月は必ず明細で目視確認を。
- 利用者ごとに要件が違う加算:個別機能訓練加算や口腔・栄養関連など、利用者ごとに計画書や記録が必要な加算は、対象者を一人ずつ確認しないと漏れやすいです。
- 区分変更の反映漏れ:加算の区分が上がった(Ⅱ→Ⅰなど)のに、明細が古い区分のままになっていないか。単位数が変わるので影響が大きい所です。
- 月の途中の入退所・入院:算定対象の日数が変わる月は、日割りや算定日数のずれから、載る・載らないの判断が難しくなります。
- 要件が崩れた月の載せっぱなし:人員欠員などで要件を満たさなくなった加算を、そのまま載せ続けると取りすぎになります。取り逃しだけでなく、この方向も点検の対象です。
- 過去分の取り戻しには期限がある:算定漏れに気づいても、さかのぼれる期間や条件には限りがあります。だからこそ「その月のうちに気づく」点検が効いてきます。
どれも、変化のあった月に丁寧を1つ足すだけで、ぐっと防ぎやすくなります。
明日やること
明日から全加算を完璧に点検しよう、と気負う必要はありません。まずは、次の小さな一歩から始めてみましょう。
- 自事業所が体制届を出している加算を、名称・区分・対象サービスだけでいいので一枚のリストに書き出す。
- 今月新規に算定を始めた加算・区分が変わった加算があれば、その行だけ先に請求明細で載っているか確認する。
- 今月職員の異動や退職があったサービスがあれば、人員要件の崩れた加算がないかを見ておく。
ここまでできれば、算定漏れの起きやすい所を先回りで押さえられます。「取れるはずのリスト」が一枚あるだけで、来月からの点検はぐっと軽くなります。
確認チェックリスト
- 体制届を出している加算を一覧(名称・区分・対象サービス)にしてあるか
- 今月新規に算定を始めた加算が、請求明細に載っているか
- 区分が変わった加算が、新しい区分・単位数で反映されているか
- 利用者ごとに要件がある加算は、対象者を一人ずつ確認したか
- 入退所・入院のあった利用者の算定日数にずれがないか
- 人員要件が崩れた加算を、載せっぱなしにしていないか
- リストにあって明細にない加算(算定漏れの候補)がないか
- 判断に迷った加算は、最新の告示・自治体通知で確認したか
よければ、こちらも
- 算定できなくなるケースを先に知っておきたいときは、加算が算定できなくなる主なケースと予防策 と合わせて見ると、取りすぎ側の不安も減ります。
- 届出の管理から整えたいときは、加算の体制届の出し方と提出期限の確認 が土台づくりの助けになります。
- 請求全体の提出前点検には、介護報酬請求 月次ミス防止チェックリスト、明細の見方は介護給付費明細書の見方と、請求内容の確認手順を一緒に整理する もどうぞ。
加算の算定漏れは、気づきにくいぶん、仕組みで防ぐのがいちばんです。「取れるはずのリスト」を一枚持って、届出・要件・実績を同じ順で突き合わせる。今日ひとつ、体制届の加算を書き出してみられたなら、それだけでもう、来月の取りこぼしはひとつ減っています。事業所が本来受け取れるものを、きちんと受け取れるように。その静かな守りが、現場を支えています。
