
入浴介助加算Ⅰ・Ⅱの要件と記録の残し方を一緒に整理
「入浴介助加算、算定はしているけれど……うちはⅠとⅡ、どちらで取るのが正しいんだろう」。デイサービスの請求を担当していると、一度はここで立ち止まりますよね。名前は似ているのに求められる中身が違い、記録もどこまで残せばいいのか分かりにくい。忙しい月末に「この算定で本当に大丈夫かな」と不安がよぎる――その感覚、とてもよく分かります。
でも大丈夫です。入浴介助加算は「Ⅰは体制と当日の記録」「Ⅱはそこに“個別の入浴計画”と“居宅の環境をふまえた介助”が加わる」と、二段構えで捉えると一気に見通しがよくなります。今日は、両者の違いと、日々の記録の最小ラインを一緒に確認しましょう。
結論:まず①どちらの区分で算定するかを決め(Ⅱのほうが求められる中身が多く、単位数も高めに設定されています)→②Ⅰなら「入浴介助を適切に行える体制」と「当日実施した記録」を固める→③Ⅱならさらに「医師・理学療法士等による居宅の入浴環境の評価」と「利用者ごとの個別入浴計画」を用意し、居宅に近い環境での介助につなげる、の順で整えると回ります。対象サービス種別・単位数・要件の細目は改定で変わるため、最終判断は最新の厚生労働省通知と指定権者(自治体)の案内で確認してください。
何がややこしく感じるのか
- ⅠとⅡで「体制の話」と「利用者ごとの計画の話」が混ざって見える
- Ⅱは居宅の環境評価という“外に出る作業”が入り、事務だけで完結しない
- 当日の記録をどこまで残せば足りるのか、線引きが分かりにくい
いったん「Ⅰの土台」と「Ⅱで上乗せされる部分」を分けて見るだけで、道筋がはっきりします。
まずⅠの土台:体制と「当日の記録」

土台になるのは、入浴介助を安全・適切に行える体制です。人員配置や設備が整っていることを前提に、当日の実施を確かに残せる形をつくります。事務側で用意しておくと安定するのは次のあたりです。
- 入浴実施の記録様式(実施/中止のチェック+担当者名)
- 中止時の理由欄(体調・本人の希望・通院など、短くてよい)
- 送迎・提供記録との突き合わせで「入浴した日」がぶれない仕組み
Ⅰは「その日、適切に入浴介助を行った」ことが記録で追えることが肝心です。まずここを崩さないよう固定します。
次にⅡで上乗せされる部分:居宅の環境評価と個別入浴計画
Ⅱは、Ⅰの体制に加えて「利用者が自宅でも無理なく入浴できるように」という視点が入ります。ざっくり言うと、次の2つが上乗せされます。
- 居宅の入浴環境の評価
- 医師・理学療法士・作業療法士・看護職員・介護福祉士など、通知で定められた職種が利用者の居宅を訪問し、浴室の環境(手すり・浴槽の高さ・出入りのしやすさなど)を確認します。
- 誰が・いつ・どこを見て・どう判断したかを記録に残します。
- 個別入浴計画の作成
- 評価をふまえ、利用者ごとに「どんな介助方法・環境で入浴を行うか」を計画にします。
- 事業所の浴室を、できるだけ居宅に近い状況に見立てて介助へつなげます。
つまりⅡは、「評価 → 個別計画 → 居宅を意識した介助 → 記録」という一連の流れをつくれるかがポイントです。訪問評価は事務だけでは完結しないので、専門職と段取りを共有しておくとスムーズです。
記録の最小ライン(時短の型)
「全部を長文で」は続きません。区分ごとに残す要点を決めておくと、日々の負担が軽くなります。
Ⅰの当日記録(最小3点)
- チェック:入浴実施/中止
- 担当者名:誰が介助したか
- 中止時のみ:理由を短く(体調・本人希望・通院 等)
Ⅱで追加する記録
- 居宅環境の評価記録:訪問した職種・氏名/評価日/確認した項目/所見
- 個別入浴計画:本人の状態・目標・介助方法・留意点・見直しの目安
- 計画に沿って介助した旨が当日記録から追えること
記入例(Ⅱ・1ケース)
- 評価:作業療法士が居宅訪問。浴槽が高く、またぎ動作に不安。手すり位置を確認。(評価日を記載)
- 計画:またぎ動作は職員が横から支持。事業所では低めの浴槽・手すりありの区画を使用。
- 当日記録:実施[✓]担当=介護福祉士/メモ:計画どおり横からの支持で安定。
ⅠとⅡで迷ったときの考え方
- ⅠとⅡは同じ日に両方は取れません。どちらか一方で算定します。
- 「居宅での入浴の自立を後押しする体制」まで整えられるならⅡ、まずは適切な入浴介助の体制からならⅠ、と段階で考えると選びやすくなります。
- 「Ⅱの要件が一部そろっていない月」に無理をせず、確実に満たせる区分で算定するのも、返還リスクを避ける現実的な判断です。迷う点は指定権者に確認しておくと安心です。
明日やること(優先順位と代替)
1) 自事業所が今どちらの区分で算定しているかを台帳で確認する 2) Ⅰの当日記録が「実施/中止・担当者・中止理由」で統一されているか点検する 3) Ⅱを取る(取りたい)なら、居宅環境評価を担う職種と段取りを相談する 4) 個別入浴計画の1ページ雛形(状態・目標・介助方法・留意点・見直し)を用意する 5) 対象サービス種別・単位数・要件の細目を最新の厚労省通知と自治体案内で確認する
影響:区分と記録がそろうと、指導の年も慌てない
「区分の選択理由」「当日の記録」「(Ⅱなら)評価と個別計画」がひとそろいになっていると、運営指導でも「なぜこの区分か」「どう実施したか」を順に示せます。改定で単位数や要件が動いても、“どこが変わったか”の差分だけを追えばよくなり、読み直しの負担がぐっと軽くなります。
確認チェックリスト(持ち歩き用・最小ライン)
- 今どちらの区分(Ⅰ/Ⅱ)で算定しているかを台帳で把握している
- Ⅰの当日記録が「実施/中止」「担当者名」「中止理由」で統一されている
- 入浴した日が送迎・提供記録と突き合わせてぶれない仕組みがある
- Ⅱの場合、居宅の入浴環境の評価記録(職種・氏名・評価日・所見)がある
- Ⅱの場合、利用者ごとの個別入浴計画(状態・目標・介助方法・留意点・見直し)がある
- 計画に沿って介助した旨が当日記録から追える
- ⅠとⅡを同日に重複算定していない
- 対象サービス種別・単位数・要件の細目を最新通知と自治体案内で確認した
- 要件が一部そろわない月の扱い(区分の切替・確認先)を決めている
よければ、こちらも
利用者ごとに計画を立てて記録し、見直していく流れは個別機能訓練加算の要件と計画書、整える順番を一緒にと考え方が似ています。あわせて、加算が算定できなくなる場面を先回りで防ぐ加算が算定できなくなる主なケースと、普段からの予防策、月々の請求での加算の扱いは介護報酬請求の月次ミスを防ぐ、提出前チェックリストも参考にしてください。

一度で全部を完璧にしなくて大丈夫です。「区分を決める」「当日の記録を統一する」「Ⅱなら評価と個別計画をそろえる」。この順で一つずつ整えれば、入浴介助加算はちゃんと回りはじめます。今日読んだところから、まずはひとつだけ確認してみましょう。
利用者さんが「気持ちよくお風呂に入れた」その一日を、記録と段取りで静かに支えているから、介護の現場は今日も前を向いて進んでいます。