相談室の固定電話でご家族からの苦情を受け、落ち着いて相手の話に耳を傾けながらメモを取る介護事業所の事務担当者

苦情を受けたときの初期対応と、記録の残し方を一緒に

「お電話なんですが……ご家族から、ちょっと厳しいお話で」。そう取り次がれて受話器を受け取る瞬間、胸がきゅっとなりますよね。何を言われるんだろう、うまく答えられるかな、怒らせてしまったらどうしよう——電話が鳴るたびに身構えてしまう日もあると思います。その気持ち、よくわかります。

でも大丈夫です。苦情の対応は、口のうまさや反論で乗り切るものではありません。まず落ち着いて相手の話を最後まで聞き、事実を確認し、その場をいったん受け止めて、記録に残してから次につなぐ。この順番さえ持っていれば、慌てずに動けます。今日は、苦情を受けたときの初期対応と、後で自分や事業所を守ってくれる記録の残し方を、現場でよくある順に一緒に整理していきましょう。

結論:苦情の初期対応は、①まず相手の話を最後まで聞き、不快な思いをさせたことにお詫びする(事実確認前なので「ご心配をおかけして」と気持ちに寄り添う形で)→ ②いつ・誰が・何を、を落ち着いて確認する → ③その場で安請け合いせず「確認して折り返します」と引き取る → ④受けた内容を記録に残し、上司・管理者に報告する → ⑤事業所として対応を決め、約束した期限までに折り返す、という流れで進めます。苦情・事故の記録の保存や報告の取り扱いは、運営基準や保険者(市区町村)の案内で定められている部分があるため、自施設の手順書と最新の案内もあわせて確認してください。

まず、最初の電話で「やらなくていいこと」から

苦情の電話でいちばん力が入ってしまうのが、最初の数十秒です。だからこそ、先に「やらなくていいこと」を外しておくと、ぐっと楽になります。

最初の電話でやることは、「最後まで聞く」「気持ちを受け止める」「事実をメモする」の3つだけ。これだけと決めておくと、頭が真っ白になりにくくなります。

初期対応は、この順番で

苦情の初期対応の流れを「聞く・受け止める・引き取る」の3つの箱で示した説明図と、それを指し示す介護事業所の事務担当者
最初の電話でやるのはこの3つ――聞いて、受け止めて、いったん引き取る。解決は次の段階で大丈夫です

電話を受けたら、次の順で進めると落ち着いて動けます。

① 最後まで聞く

途中でさえぎらず、相手が言いたいことを最後まで話してもらいます。あいづちを打ちながら、「そうだったのですね」「お話しくださってありがとうございます」と、聞いている姿勢を声で伝えます。相手は、まず「わかってほしい」と思って電話をかけてきています。

② 気持ちを受け止めてお詫びする

事実がまだわからなくても、不安な思いや不快な思いをさせたことにはお詫びできます。「ご心配をおかけして申し訳ありません」「お気持ち、ごもっともです」。ここで謝るのは、事故の責任を認めることとは違います。気持ちに寄り添う一言です。事実関係の責任については、確認後に事業所として判断します。

③ 事実を確認して、いったん引き取る

落ち着いてきたら、「いつ」「どこで」「誰が」「何が」起きたのかを、わかる範囲で確認します。そのうえで、「確認して、改めてご連絡させてください」と引き取ります。このとき、いつまでに折り返すか(例:「明日の午前中までに」)を伝えると、相手も待ちやすくなります。あいまいな約束はしない、でも放置もしない。この線引きが大切です。

①で受け止め、②で寄り添い、③で次につなぐ。この3歩で、最初の電話はじゅうぶんです。

記録は「その場のメモ」と「正式な記録」を分けて考える

苦情の記録に残す項目を「いつ・誰が・何を・どう対応・次の約束」の順に並べたメモ様式の図
記録は5つの柱で残すと迷いません――事実と、自分がした対応を分けて書くのがコツです

苦情対応で後から効いてくるのが、記録です。とはいえ、電話を受けながら完璧な記録は書けません。「通話中の走り書きメモ」と、「あとで整える正式な記録」を分けて考えると、無理がありません。

通話中は、聞き取ったことをそのまま走り書きで残します。電話を切ったら、落ち着いて次の5つの柱に沿って整えます。

  1. 日時:いつ受けたか(受付日時)、いつの出来事についてか
  2. 相手:誰から(利用者本人・家族・続柄など)、誰が受けたか
  3. 内容:どんな苦情・要望か。相手の言葉をできるだけそのまま
  4. 対応:その場で自分が何を伝えたか(お詫びした・確認すると伝えた、など)
  5. 約束:いつまでに、何を、誰が折り返すと伝えたか

ここで大事なのは、「相手が言ったこと(事実)」と「自分が判断・対応したこと」を分けて書くことです。「〜と言われた」「〜とお伝えした」のように、誰の言葉かがわかるように残すと、後で読み返したときに混乱しません。

影響:記録は、あなたと事業所を守ってくれる

苦情の記録は、クレームを蒸し返すための材料ではありません。むしろ逆で、「事業所として、誠実に受け止めて対応した」という事実を残すものです。

後日「言った・言わない」になったとき、記録があれば落ち着いて事実を確認できます。同じような苦情が続いているなら、記録を見返すことで「ここに改善のヒントがある」と気づけます。そして何より、対応したあなた自身が「自分はちゃんと受け止めて、必要なことをした」と確認できる——これは、見えないけれど大きな安心です。

苦情対応は、つらい仕事です。でも、ていねいに受けて記録に残したその一枚が、あとからあなたを守ってくれます。今日のひと手間は、決してむだになりません。

明日やること

明日いきなり完璧な苦情対応マニュアルを作らなくて大丈夫です。まずは、

  1. 苦情を受けたときの「聞く・受け止める・引き取る」の3歩を、メモ1枚にして電話のそばに貼っておく
  2. 記録用に「日時・相手・内容・対応・約束」の5項目を書いた簡単なメモ様式を1枚用意する
  3. 受けた苦情を誰に報告するか(上司・管理者)の流れを、自分の中で確認しておく

ここまで準備しておけば、次に電話が鳴っても、どこから手をつければいいかがはっきりします。

確認チェックリスト(持ち歩き用)

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苦情対応と記録を終え、片づいたデスクのそばで晴れた窓の外を見て、肩の力を抜いてやわらかくほほえむ介護事業所の事務担当者

苦情の電話は、何度受けても緊張するものです。でも、最後まで聞いて、気持ちを受け止めて、記録に残す——この順番を知っているあなたは、もう慌てずに最初のひと言を返せます。一人で抱え込まず、受けたことを記録にして、事業所みんなで次の一手を考えていきましょう。

つらい電話をていねいに受け止めて、静かに記録に残していく仕事があるから、利用者さんとご家族の信頼は、今日も少しずつ守られています。

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