
介護の利用料が滞納に|責めずに進める相談と手順
「今月も、利用料の入金がない……」。通帳や入金一覧を見て、特定の方の欄が空いているのに気づいたとき、胸のあたりが重くなりますよね。催促の電話をかけるのも気が引けるし、かといって放っておけば金額はふくらんでいく。ご本人やご家族の暮らしの事情も見えているから、なおさら強く言えない――その板挟みのつらさ、よくわかります。
でも大丈夫です。滞納は「お金を取り立てる場面」ではなく、「その方の暮らしに何か起きているサインを、早めに受け止める場面」だと考えると、少し肩の力が抜けます。責めずに、事情を聞くところから始めれば大丈夫です。今日は、相談の進め方と記録の残し方を、現場でつまずきやすい所に絞って一緒に整理していきましょう。
結論:滞納に気づいたら、①どの月の・いくらが・いつから未納かを一覧で整理する → ②責めない言葉で、まず「お変わりないですか」と連絡して事情を聞く → ③支払える方法(分割・期日の相談・引き落とし変更など)を一緒に探す → ④相談内容と約束を記録に残す、という順番で進めると落ち着いて対応できます。事情によっては、生活保護や成年後見、社会福祉協議会の相談などにつなぐ選択肢もあります。契約解除や法的な手続きは事業所ごとの契約書・規程や自治体の案内によって扱いが異なるため、最終判断は管理者や法人と相談し、必要に応じて自治体・専門窓口の最新の案内で確認してください。
滞納は「催促」より先に、事情を知ることから
督促というと、つい「早く払ってください」と伝える場面を思い浮かべますよね。でも、利用料が止まっている裏側では、たいてい何かが起きています。
- ご本人の入院や体調の変化で、通帳の管理ができなくなっていた
- 支払いを担っていたご家族が、病気・失業・別の出費で余裕をなくしていた
- 口座残高不足や引き落とし口座の変更で、そもそも引き落としが失敗していた
- 認知症などで、支払い自体を忘れてしまっている
つまり滞納は「払う気がない」より、「払えない・払い忘れる事情」が背景にあることが多いのです。だから最初の一歩は、催促ではなく確認です。「お変わりありませんか」「何かお困りごとはないですか」と、暮らしの様子を気づかう言葉から入ると、相手も事情を話しやすくなります。
まず押さえたい:滞納対応の全体像

滞納対応は、いきなり全部をやろうとすると気が重くなります。次の4つのステップに分けると、今日はどこまでやればいいかがはっきりします。
- 整理する:どの月の・いくらが・いつから未納かを一覧にする
- 連絡する:責めない言葉で、まず事情を聞く
- 相談する:支払える方法を一緒に探す
- 記録する:やり取りと約束を残す
一度に一人で抱え込まず、状況を管理者やケアマネと共有しながら進めるのがコツです。事務ひとりの責任にしないことが、続けられる対応につながります。
手順を小さく分けて進める
① まず、事実を一覧に整理する
連絡の前に、手元で事実だけを整理します。感情ではなく、数字と日付をそろえるイメージです。
- 対象の方の氏名・利用月
- 未納の金額(複数月あれば月ごとに)
- いつから止まっているか、直近の入金はいつか
- 支払い方法(口座引き落とし・振込・現金など)と、失敗の有無
ここを整理しておくと、連絡のときに「何を確認したいのか」がぶれません。引き落とし不能が原因なら、口座の再登録だけで解決することもあります。
② 責めない言葉で連絡する
連絡は、督促状より先に「一本の電話や声かけ」から始めると角が立ちません。伝える順番は、心配 → 事実の確認 → お願い、が基本です。
やわらかい言い方の例です。
- 「〇〇さん、その後お変わりないですか。少し気になってご連絡しました」
- 「実は今月分のお支払いが確認できていなくて。何か行き違いがなかったか、確認させていただけますか」
- 「もしお支払いのことでお困りがあれば、一緒に方法を考えたいので、遠慮なくお聞かせください」
避けたいのは、「払ってもらわないと困ります」「決まりですので」と、こちらの都合だけを先に出すこと。相手が身構えてしまい、かえって話が止まります。まずは事情を受け止める姿勢が伝わると、相手も安心して事情を話してくれます。
③ 支払える方法を一緒に探す
事情がわかったら、「どうすれば払えるか」を一緒に考えます。最初から「一括で」と迫らず、現実的な選択肢を並べます。
- 分割払い:無理のない金額と回数を相談して決める
- 支払期日の調整:年金の入金日など、お金が入るタイミングに合わせる
- 引き落とし口座・方法の変更:失敗が続く場合は、口座やタイミングを見直す
- 窓口の一本化:ご本人が難しければ、ご家族やキーパーソンに窓口をお願いする
決めた内容は、その場の口約束にせず、「では来月から毎月〇日に△△円ずつ」と具体的な形にして、双方で確認します。金額や期日を明確にしておくと、後から「言った・言わない」になりにくく、相手も見通しが立って安心できます。
④ やり取りと約束を記録に残す
滞納対応は、記録がそのまま次の対応の土台になります。担当者が代わっても引き継げるよう、事実ベースで残します。
残しておきたい項目です。
- 連絡した日時・方法(電話/訪問/文書)・話した相手
- 相手が話した事情(体調・家計・入院など、わかった範囲で)
- 合意した支払い方法・金額・期日
- 次の確認日(フォローの予定)
記録は「督促した証拠」のためだけではありません。ご本人の暮らしの変化を早く察知し、ケアマネや地域包括支援センターにつなぐための大切な情報にもなります。
それでも支払いが難しいときの選択肢
事情を聞くと、事務や事業所だけでは解決が難しいケースもあります。無理に事業所内で抱え込まず、専門の窓口につなぐことも、立派な対応のひとつです。
- 生活の困窮が背景にある:市区町村の生活相談窓口、生活困窮者自立支援の窓口、生活保護の相談へ
- お金の管理が難しくなっている:社会福祉協議会の日常生活自立支援事業や、成年後見制度の相談へ
- ご本人の判断が難しい:地域包括支援センターやケアマネと連携し、キーパーソンを確認する
- 家計の一時的な不足:社会福祉協議会の貸付制度などの情報を、そっと案内する
こうした制度は、自治体や社会福祉協議会によって名称や条件が異なります。案内するときは断定せず、「こういう相談先もあるようです」と情報として渡し、詳細は各窓口で確認してもらうのが安全です。契約解除まで踏み込むかどうかは、契約書の定めや法人の方針にかかわる重い判断なので、必ず管理者・法人と相談してから進めましょう。
今日からできるチェックリスト
- 未納の方を、月・金額・開始時期で一覧に整理したか
- 引き落とし失敗など、事務的な原因の可能性を確認したか
- 連絡は「心配」から入る言葉づかいになっているか
- 相手の事情を、責めずに聞けたか
- 分割や期日調整など、現実的な支払い方法を一緒に考えたか
- 合意した金額・期日・次の確認日を記録に残したか
- 事務ひとりで抱えず、管理者やケアマネと共有したか
- 事業所で解決が難しい場合の相談先を把握しているか
全部を今日やる必要はありません。まずは一覧の整理と、気になる一人への「お変わりないですか」の一本から始めれば十分です。
締めに
利用料の督促は、事務のなかでも特に気の重い仕事です。お金の話は切り出しにくく、相手の暮らしが見えているぶん、強く言えない。その葛藤を抱えながら、それでも連絡しようとしているあなたは、もう十分ていねいに向き合っています。
滞納対応は、取り立てではなく、その方の暮らしの変化に早く気づく仕事でもあります。責めずに事情を受け止めるあなたの一本の連絡が、ご本人やご家族の困りごとを、大きくなる前にそっと支えています。今日は一人に声をかけられたら、それで十分です。

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