介護事業所の事務室で、机に並べた数冊のファイルと1枚の一覧表を見比べながら、どこに何があるかを整理しようとしている事務担当者

加算の根拠資料、算定にひもづけて保管する方法を一緒に整理

「個別機能訓練加算の根拠、見せてもらえますか」。運営指導の日にそう聞かれて、計画書は相談員の棚へ、勤務表は管理者のパソコンへ、資格証の写しは事務の引き出しへ。行ったり来たりしているうちに、どんどん焦ってくる。そんな場面を想像して、胃のあたりが重くなったことはありませんか。

加算の根拠になる書類は、たいていちゃんと作られています。足りないのは書類そのものではなく、「この加算の根拠はこれと、これと、これ」とひとまとまりで指させる状態のほうです。

それは、あなたの整理が下手だからではありません。根拠資料は、介護職・看護職・相談員・管理者・事務と、作る人がそれぞれ違う。だから、放っておけば散らばるのが自然なんです。この記事では、算定している加算ごとに根拠をひもづけて保管するやり方を、事務の目線で一緒に整理します。

結論:加算の根拠資料は、①算定中の加算ごとに「根拠一覧」を1枚つくる ②根拠を「事業所ごと」と「利用者ごと」の2つに分けて置き場所を決める ③請求の締めと同じタイミングで、その月の根拠がそろったかを確かめる ④一覧表を引き継ぎの台帳にする、の4つで回ります。書類を作り直す必要はありません。今ある書類に「どの加算の根拠か」という道しるべを足すだけです。まずは算定している加算を1つ選んで、根拠一覧を1枚書くところから始めれば十分です。

何が起きているか:根拠は「作る人」も「置き場所」もばらばら

加算は、算定の要件を満たしていることを、記録や書類で後から確かめられることが前提です。運営指導では、算定している加算について、要件を満たしていたことが分かる書類を確認されることがあります。根拠が確かめられないと、算定した報酬の返還(過誤調整)を求められることもあります。

ここで根拠になる書類は、だいたい次のようなものです(加算ごとに中身は違うので、自事業所の算定要件と指定権者の案内で確かめてください)。

つまずきやすいのは、これらがそれぞれの作り手の手元に置かれたままになっていることです。

一つひとつはきちんとあるのに、「この加算の根拠」としてつながっていない。ここは、どの事業所でも迷いやすいところです。だからこそ、書類と加算のつなぎ目を整えるのは、全体が見える事務にいちばん向いている役割です。

根拠資料は4つのステップでひもづける

上に1枚の一覧表があり、その下に事業所全体の根拠を綴じたファイルと、利用者ごとの根拠を綴じたファイルの2つが並び、一覧表から2つのファイルへ線がつながっている図
加算ごとの「根拠一覧」を1枚つくり、根拠を「事業所ごと」と「利用者ごと」の2か所に分けて置くと、どの加算の根拠もすぐ指させます

一度に全部の加算を整えなくて大丈夫です。算定している加算を1つずつ、次の4つの順番で進めていきましょう。

① 加算ごとに「根拠一覧」を1枚つくる

まず、算定している加算を1つ選び、A4の紙1枚(またはExcelの1シート)に次の4列を書きます。

要件(何を満たす必要があるか)根拠になる書類作る人置き場所
例:機能訓練指導員を配置している勤務表・資格証の写し管理者事業所ファイル
例:計画を作り、説明して同意を得ている計画書・同意の記録機能訓練指導員利用者ファイル
例:計画にそって訓練を実施している実施記録担当職員記録ソフト

※ 上の表は書き方の例です。実際の要件は、加算の種類や区分ごとに告示・通知と指定権者の案内で確かめてください。

要件の列は、加算を届け出たときに確かめた資料や、指定権者が公開している自己点検シートを手元に置いて書くと、抜けが出にくくなります。ポイントは、「作る人」の列を必ず埋めることです。根拠がそろわないとき、誰に声をかければいいかがすぐ分かるからです。

② 根拠を「事業所ごと」と「利用者ごと」に分けて置く

根拠資料は、大きく2種類に分けると置き場所が決めやすくなります。

紙でも電子でも考え方は同じです。共有フォルダなら、たとえば「加算の根拠/個別機能訓練加算/2026年度」のように、加算名→年度の順に階層を切っておくと、誰が開いても迷いません。

介護記録ソフトの中にある記録は、無理に印刷して移さなくて大丈夫です。根拠一覧の「置き場所」の列に「記録ソフトの○○画面」と書いておけば、そこが道しるべになります。

③ 請求の締めと同じタイミングで「そろったか」を確かめる

根拠は、後からまとめて集めようとすると、思い出せない・見つからないが重なってしんどくなります。おすすめは、毎月の請求の締めと同じタイミングで、根拠一覧を見ながら1つずつ確かめることです。

全部を見なくても、今月はじめて算定した人と、見直しの時期が来た人だけ見れば十分な月もあります。足りないものが見つかったら、根拠一覧の「作る人」に声をかけるだけでかまいません。算定漏れの点検とあわせるなら、加算の算定漏れを防ぐ月次点検のしかたを一緒に整理する の手順と同じ日にまとめると、ひと手間で済みます。

④ 根拠一覧を「引き継ぎの台帳」にする

根拠一覧は、作って終わりにせず、加算の担当が変わったときの引き継ぎ資料として使います。事業所ごとのファイルの1枚目に一覧をはさんでおけば、ファイルを開いた人がまず「この加算は何が根拠で、どこにあるか」を読めます。

加算の区分を変えたとき、新しく加算を届け出たとき、制度改定で要件が変わったときは、一覧の「要件」の列を見直す合図です。一覧の右下に最終見直し日を書いておくと、古いまま残っていないかがひと目で分かります。

具体例:個別機能訓練加算の根拠を、1枚にまとめてみる

たとえば、通所介護で個別機能訓練加算を算定している事業所の事務さんが、根拠一覧を作ったとします。

作る前 運営指導の準備で根拠を集めようとしたら、計画書は機能訓練指導員の棚、同意の記録は相談員のファイル、指導員の資格証の写しは事務の引き出し、配置が分かる勤務表は管理者のパソコン。4か所を回って、半日かかった。

作ったあと

次の運営指導では、「この加算の根拠はこちらです」と一覧を見せながら、ファイルを2冊開くだけで説明できました。何より、普段の月に「足りないもの」に早く気づけるようになったことが、いちばん大きな変化でした。

影響:根拠がひもづくと、事務も現場も落ち着いて算定できる

根拠がひもづいていると、運営指導の準備がぐっと軽くなります。でも、本当に大きいのは普段の月です。

加算は、現場の職員さんががんばった分を、きちんと報酬として受け取るためのしくみです。根拠をそろえておくことは、その努力を守ることでもあります。

明日やること(優先順位と代替)

  1. 算定している加算を一覧にする(請求ソフトの加算設定や、体制届の控えを見ると早いです)
  2. その中から1つだけ選んで、根拠一覧を1枚つくる(いちばん根拠の書類が多い加算から始めると、効果を感じやすいです)
  3. 根拠一覧の「置き場所」の列を見ながら、事業所ごとのファイルを1冊用意する
  4. 利用者さんごとのファイルに、加算名の見出し紙をはさむ
  5. 次の請求の締めの日に、根拠一覧を見て「今月の分がそろっているか」を確かめる

時間がとれない週は、1と2だけでも十分です。根拠一覧が1枚あれば、あとの整理はそこから少しずつ進められます。

確認チェックリスト(加算の根拠資料・最小ライン)

よければ、こちらも

加算の根拠資料は、新しく作り直さなくていいんです。今ある書類に「どの加算の根拠か」という道しるべを足すだけ。今日、加算を1つ選んで根拠一覧の1行目を書けたら、それでもう十分に前へ進んでいます。

介護事業所の事務室で、事務担当者が棚から1冊のファイルを取り出し、隣の管理者に開いて見せながら、2人で安心した笑顔を交わしている様子

根拠がそろっていないことに気づけたのは、あなたが加算のことを丁寧に見ている証拠です。散らばっていた書類を一つの線でつなぐのは、全体が見える事務だからこそできる仕事。その一本の線が、現場のがんばりを、きちんと守っていきます。