夜の静かな事務室で、看取り介護の記録と算定日数のメモを前に、ひとりの利用者の最期に向けた書類をていねいに確認している介護施設の事務担当者

看取り介護加算の算定要件と記録の整え方を一緒に

「看取りの加算、今回はじめて算定するんだけど…要件、これで足りてるのかな」。ひとりの利用者さんの最期が近づいているとき、ケアの現場が一生懸命に寄り添っているその横で、事務は静かに書類を整えます。看取り介護加算は、金額の大小より前に「間違えたくない」という気持ちがいちばん強く出る加算ではないでしょうか。指針は要る、研修も要るらしい、算定できる日数に区切りがある、家族への説明の記録が要る——聞いたことはあっても、いざ目の前の一件になると、どこから確かめればいいのか迷ってしまいますよね。その慎重さは、とても大切なものだと思います。

でも大丈夫です。看取り介護加算は、押さえるところを順番に分ければ、決して手に負えないものではありません。大きくは「①ふだんから整えておく体制(指針・研修・体制)」と「②その方ごとに行う実施と記録」の2つに分かれます。今日は、看取り介護加算の算定要件と記録の整え方を、現場でつまずきやすい順に一緒に整理していきましょう。

結論:看取り介護加算は、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)・特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などで、医師が回復の見込みがないと診断した方に、施設内で看取りの介護を行った場合に算定できます。事務として押さえるのは3つ。①体制要件=看取りに関する「指針」を定めて入所時などに本人・家族へ説明し同意を得ておく、看取りに関する職員研修を行っておく、看取り時に個室や静養室が使える体制を整える。②実施要件=医師の診断のもと、医師・看護職員・生活相談員・介護職員等が共同で作成した計画について本人・家族の同意を得て看取り介護を実施する。③算定日数死亡日を基準に日数区分ごとに単位が決まる(区分と加算Ⅰ・Ⅱで単位が異なる)。具体的な単位数と区分の日数は改定で変わるので、必ず最新の単位数表・告示で確認しましょう。

そもそも看取り介護加算とは

まず、言葉の整理から。看取り介護加算は、「もう治療で回復を目指す段階ではない」と医師が判断した利用者さんに対して、住み慣れた施設で最期まで穏やかに過ごしてもらうためのケアを評価する加算です。病院へ移すのではなく、本人と家族が「ここで見送りたい」と望んだとき、その体制を整えている施設が算定できます。

大事なのは、この加算が「その日だけ」ではなく、亡くなる前の一定期間にさかのぼって算定できるという点です。死亡日を起点にして、「死亡日」「死亡日の前日・前々日」「そこからさらに前の期間」といったように、日数の区分ごとに単位が設定されています。区分が死亡日に近いほど手厚い単位になる、というイメージを持っておくと、後の計算で迷いにくくなります。

なお、看取り介護加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)の区分があり、施設の看取り体制の充実度(配置医師による対応体制など)で分かれます。どちらを算定できるかは施設の体制によりますので、まずは「自分の施設はⅠ・Ⅱのどちらの体制か」を運営側と確認しておきましょう。

算定できる主なサービスと対象

看取り介護加算を算定できるのは、入所・入居して生活する場が中心です。代表的には次のようなサービスです。

対象となるのは、ざっくり言うと次の条件を満たす方です。

「本人の意思」と「家族の同意」、そして「医師の診断」——この3つがそろっているか。ここが要件の土台になります。

まず整えたい「体制」の3点

看取り介護加算が「ふだんの体制」と「その方ごとの実施」の2つに分かれることを示した説明図
加算は「ふだんの体制」と「その方ごとの実施」の二階建て――土台があってこそ算定できる

看取り介護加算でつまずきやすいのは、「その方が亡くなってから慌てて要件を確認する」パターンです。実は要件の半分は、亡くなるずっと前、ふだんから整えておくもの。ここが土台になります。事務が関わるのは主に次の3点です。

① 看取りに関する「指針」を定めておく

施設として、看取りに関する指針(どういう考え方・手順で看取りを行うか)を定め、入所・入居のとき(またはその方針を必要とするとき)に本人・家族へ説明し、同意を得ておくことが求められます。指針が古いままになっていないか、説明した記録が残っているか——ここは事務が定期的に見ておきたいところです。

② 看取りに関する「研修」を行っておく

医師・看護職員・介護職員・生活相談員等が参加する看取りに関する研修を実施していることが要件です。年間研修計画のなかに看取りの研修が入っているか、実施日・参加者・内容の記録が残っているかを確認しておきましょう。監査・実地指導でも見られやすいポイントです。

③ 看取り時に個室・静養室が使える体制

看取りを行う際に、プライバシーが保たれる個室や静養室を利用できる体制を整えておくことも求められます。「いざというときにその環境を用意できるか」を、運営側と共有しておくと安心です。

この3つは、その方が看取りの段階に入る前から用意しておくもの。土台ができていれば、実際に看取りが始まったときに、事務は落ち着いて記録に集中できます。

その方ごとの「実施」と算定日数の考え方

体制の土台があるうえで、いよいよその利用者さんの看取りが始まったら、次の流れになります。

  1. 医師の診断:医師が医学的知見にもとづき、回復の見込みがないと診断する。
  2. 計画の作成と同意:医師・看護職員・生活相談員・介護職員等が共同で、看取りに関する介護の計画(ケア方針)を作成し、本人または家族へ説明して同意を得る
  3. 看取り介護の実施と記録:計画にそって看取りの介護を行い、本人の状態やケアの内容、家族への連絡・説明を記録していく。
  4. 死亡日を基準に算定:亡くなったあと、死亡日からさかのぼって日数区分ごとに単位を算定する。

ここで事務がいちばん気をつけたいのが、算定日数の数え方です。看取り介護加算は「死亡日」を基準に、そこからさかのぼって複数の日数区分に分かれ、区分ごとに単位が違います。死亡日に近い区分ほど単位が手厚く、さかのぼるほど単位が下がる、というのが基本の形です。

ただし、区分の日数の区切りも、それぞれの単位数も、報酬改定で見直されることがあります。ここは記憶で処理せず、必ずその時点の単位数表・算定告示・請求ソフトのマスタで確認してください。「死亡日」「前日・前々日」「それ以前の期間」といった区分があること、区分ごとに単位が変わることだけ頭に入れておき、具体の数字は毎回原典を見る——これが、看取り加算でいちばん安全なやり方です。

なお、看取り期間中に入院してそのまま病院で亡くなった場合など、施設で看取っていない日は算定できないのが基本です。「どの日まで施設で看取ったか」を、記録から正確に拾えるようにしておきましょう。

記録の整え方:後から見て流れがわかる形に

看取り介護加算は、記録がそのまま算定の根拠になります。実地指導でも「その日、本当に看取りの介護を行ったのか」を記録で確認されます。次のものがそろっているかを見ておきましょう。

コツは、「後からその人の最期の日々を、記録だけでたどれるか」という目で見直すこと。日付・担当者・本人や家族の言葉が具体的に残っていれば、算定の根拠としても、そしてご家族への説明としても、十分に力を持ちます。

見落としやすい注意点

影響:正しく整えると、ケアも数字も、そして家族も守れる

看取り介護加算の要件と記録を事務が整えておくと、三つのいいことがあります。ひとつは、返還リスクを減らせること。体制と記録さえそろっていれば、看取り加算は堂々と算定できます。ふたつめは、現場のケアが記録として残ること。最期の日々に職員が積み重ねた関わりが、きちんと形になります。そして三つめは、ご家族の安心につながること。「ここで最期まで診てもらえた」という信頼は、整った記録と説明の積み重ねから生まれます。

看取りは、施設で働く誰にとっても、簡単ではない時間です。その大切な時間の裏側で、書類と数字を静かに整える事務の仕事は、ケアそのものと同じくらい、ひとりの方の最期を支えています。

明日やること

明日いきなり全部を完璧にしなくて大丈夫です。まずは、

  1. 自分の施設の看取りに関する指針が最新の内容か、本人・家族への説明記録が残っているかを確認する
  2. 看取りに関する研修が年間計画に入っているか、直近の実施記録があるかを見ておく
  3. 自施設が看取り介護加算のⅠ・Ⅱどちらの体制か、運営側に確認しておく

ここまでできれば、次に看取りの場面が来たとき、事務として落ち着いて動けます。単位数や日数区分は、そのとき最新の資料で確かめれば大丈夫です。

確認チェックリスト(算定前のセルフ確認)

全部を暗記する必要はありません。ここを外すと算定がぶれるという最低ライン(必須4つ)と、できれば見ておきたい任意3つに分けました。まずは必須4つから。

必須(ここだけは押さえたい4つ)

できれば(余裕があれば見ておきたい3つ)

よければ、こちらも

加算は「要件を満たす」ことと「記録で示せる」ことの両輪です。あわせて読むと整理しやすくなります。記録の残し方全般は日々の記録を実地指導に強くする残し方の工夫を一緒に、算定漏れや取り違えを防ぐ習慣は加算の算定漏れを防ぐ月次点検のしかたを一緒にをどうぞ。うっかり算定できなくなるケースが不安なときは加算が算定できなくなる主なケースと予防策を一緒にも一緒に読むと、落ち着いて備えられます。

看取りの記録を整え終え、窓の外の穏やかな夕暮れの空へ静かに顔を向けてやわらかくほほえむ介護施設の事務担当者

看取り介護加算は、名前も要件も身構えますが、「ふだんの体制(指針・研修・個室)」と「その方ごとの実施と記録」に分けて、死亡日を基準に最新の単位で算定する——この筋さえ通れば、こわいものではありません。今日この記事を読んだあなたは、次に看取りの場面が来ても、どこを見て、どこを確認すればいいかを、もう知っています。

ひとりの方の最期に、施設で寄り添えること。その裏側を、記録と数字で静かに支えるのは、現場の事務だからこそできる、とても尊い仕事です。

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