介護事業所の相談室で、50代くらいの利用者とその家族を前に、事務担当者が介護保険の書類を一緒に確かめながら、やわらかい表情で受付をしている場面

第2号被保険者の請求|特定疾病の方の受付と確認点を一緒に整理

新しく契約が決まった利用者さんのフェイスシートを見て、ふと手が止まる。生年月日から数えると、まだ50代。「あれ、40〜64歳の方って、介護保険の請求で何か違うんだっけ?」。ケアマネさんからは「脳梗塞の後遺症で」と聞いている。でも、請求ソフトに何か特別な入力が要るのか、確かめておくべき書類があるのか、思い出せない。

件数が少ないぶん、毎月触れるわけではないので、迷うのは当たり前です。そして安心してほしいのは、第2号被保険者の方の請求そのものは、65歳以上の方とほとんど同じだということ。違いが出るのは、「受付のとき」と「その方の状況が変わるとき」の2つの場面だけです。今日はそこだけを、順番に整理していきましょう。

結論:第2号被保険者(40〜64歳で医療保険に加入している方)の請求で事務が押さえるのは3つです。①特定疾病に当たるかどうかは事務が判断しない(要介護認定が出ていれば、保険者がすでに確認済み)。②受付では被保険者証・負担割合証・医療保険の加入状況の3点を確かめる(負担割合は所得にかかわらず1割)。③65歳の誕生日・生活保護の開始・引っ越しという「変わり目」で、資格や負担割合が動いていないかを確かめる。本記事は2026年10月時点の一般的な整理です。保険者(市区町村)ごとの運用もあるので、迷ったときは保険者の窓口に確かめてください。

第2号被保険者の請求で迷いやすいのは、なぜか

まず言葉の整理から。介護保険の被保険者は、年齢で2つに分かれています。

第2号の方の請求で迷いやすいのは、こんな事情が重なるからです。

どれも、担当者の知識不足のせいではありません。確認する場面が決まっていないから迷うだけです。場面を2つに絞れば、ぐっと落ち着いて進められます。

その1:特定疾病の判断は、事務の仕事ではない

最初に、肩の荷をひとつ下ろしておきましょう。「この病気は特定疾病に当たるのか」を判断するのは、事務の仕事ではありません。

第2号の方が要介護認定を申請すると、主治医意見書に書かれた診断をもとに、介護認定審査会が「特定疾病によるものか」を確認したうえで認定が出ます。つまり、要介護・要支援の認定が出て被保険者証に記載されている時点で、その確認はもう済んでいます。

参考までに、特定疾病は次の16種類です(介護保険法施行令で定められています)。

  1. がん(医師が、一般に認められている医学的知見にもとづき、回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

この一覧は、ご家族やケアマネさんとの会話で「何の病気が原因で認定が出ているか」を理解するための地図として持っておけば十分です。事務が病名を見て「これは対象外では?」と判断を足す必要はありません。気になることがあれば、ケアマネさんか保険者に聞けば大丈夫です。

その2:受付では「3点」を確かめる

第2号の方の受付で確かめるのは、次の3つです。ここさえそろえば、請求はいつもの流れにのります。

① 介護保険の被保険者証

65歳以上の方には、65歳になると全員に被保険者証が届きます。一方、第2号の方の被保険者証は、要介護認定を受けたときなどに交付されるのがふつうです。だから「認定は出たけれど、証がまだ手元に届いていない」というタイミングがありえます。

確かめるのは、いつもと同じです。

被保険者証の情報の照らし合わせ方は、利用開始でそろえる書類と、受付の流れを一緒に整理にまとめています。

② 負担割合証(第2号の方は1割)

第2号被保険者の方の利用者負担は、所得にかかわらず1割です。2割・3割の判定は第1号の方だけに行われるしくみだからです。

負担割合証は第2号の方にも交付されるので、請求ソフトの負担割合が1割で登録されているかを負担割合証と照らし合わせておきましょう。ほかの利用者さんの登録をコピーして作ったときなどに、割合がそのまま残っていないかだけ見ておくと安心です。負担割合証の見方は利用者負担割合証の確認と、請求への反映のしかたを一緒にで詳しく整理しています。

③ 医療保険の加入状況

第2号被保険者であることの前提は、医療保険に加入していることです。受付のときに、どの医療保険に入っているか(会社の健康保険か、国民健康保険か)を、ご本人やご家族に一言たずねて記録しておきましょう。資格の確認方法(マイナ保険証・資格確認書など)は、保険者や医療保険側の案内に合わせれば大丈夫です。

これが大事になるのは、あとで出てくる「変わり目」のときです。また、第2号の方は医療との関わりが深いことも多く、たとえば訪問看護が医療保険から給付されるケースもあります。介護保険と医療保険のどちらで給付されるかの整理は、介護保険と医療保険の給付調整、事務が確認する優先順位を整理が参考になります。

その3:「変わり目」で資格と負担割合を確かめる

左に誕生日のケーキ、中央に福祉事務所の窓口、右に引っ越しの段ボール箱を並べ、第2号被保険者の方の資格や負担割合を確かめ直す3つの変わり目を表した図
第2号の方は「誕生日(65歳)」「生活保護の開始」「引っ越し」の3つの変わり目で、資格や負担割合を確かめ直します

第2号の方の請求でいちばん気をつけたいのは、受付のときより、むしろその方の状況が変わるときです。主な変わり目は3つあります。

変わり目1:65歳の誕生日(第1号へ切り替わる)

65歳の誕生日の前日から、その方は第1号被保険者になります。 要介護認定はそのまま引き継がれるので、サービスが途切れることはありません。ただ、事務として確かめておきたいことが2つあります。

誕生日の月が来る前に気づけるように、第2号の方は利用者一覧に生年月日と「65歳になる年月」を書いておくのがおすすめです。年に1回、一覧を見直すだけで、切り替わりの月にあわてずにすみます。

変わり目2:生活保護の開始(「みなし2号」になることがある)

40〜64歳の方が生活保護を受けるようになり、国民健康保険から抜けると、医療保険に加入していない状態になるため、第2号被保険者ではなくなります。この場合、介護サービスの費用は介護保険ではなく、全額を生活保護の介護扶助でみる形に変わります(現場では「みなし2号」と呼ばれることがあります)。

請求の立て方がまるごと変わるので、福祉事務所から介護券が届いたら、被保険者かどうかを必ず確かめるようにしましょう。会社の健康保険に入ったまま生活保護を受ける方は、引き続き第2号被保険者です。どちらに当たるかは、福祉事務所の担当ケースワーカーに確かめれば確実です。詳しい流れは生活保護(介護扶助)の請求の流れと注意点を一緒に整理にまとめています。

変わり目3:引っ越し(保険者が変わる)

ほかの市区町村に住所を移すと、保険者が変わります。これは第1号の方と同じです。新しい保険者の被保険者証が届いたら、保険者番号と被保険者番号を登録し直し、どの月から新しい保険者で請求するかを確かめます。施設入所にともなう住所変更なら、住所地特例に当たるかどうかも見ておきましょう。住所地特例・保険者が変わったときの請求、確認の順番を一緒に整理が参考になります。

影響:確かめる場面が決まると、少ない件数でも迷わない

請求ソフトの登録ミスによる返戻が減ります。 被保険者番号・負担割合・保険者の3つは、返戻の原因になりやすいところです。受付と変わり目で確かめる場面が決まっていれば、ズレがあっても請求の前に気づけます。

65歳の切り替わりで、利用者さんを驚かせずにすみます。 負担割合が変わる可能性を前もって知っていれば、ケアマネさんやご家族に「来月から負担が変わるかもしれません」と、落ち着いてお伝えできます。

担当が代わっても引き継げます。 利用者一覧に「第2号」「65歳になる年月」「医療保険の種類」が書いてあれば、次の担当の方も同じように確かめられます。

明日やること(優先順位と代替)

  1. いま利用中の方のなかから、40〜64歳の方をリストアップする(請求ソフトの利用者一覧を生年月日で並べ替えると、5分ほどで見つかります)
  2. その方の負担割合が1割で登録されているかを、負担割合証と見比べる(1件ずつで大丈夫です)
  3. 利用者一覧に「65歳になる年月」を書き足す(直近1年以内に65歳になる方がいれば、その月に付せんを貼っておくと安心です)
  4. 医療保険の種類が分からない方がいれば、次にお会いするときに一言たずねる(無理に今日聞かなくても大丈夫です)
  5. 「生活保護が始まったら、被保険者かどうかを確かめる」を、受付手順のメモに1行足す

全部を今日やらなくて大丈夫です。1と2だけでも、第2号の方の請求への不安は、ずいぶん小さくなります。

確認チェックリスト(持ち歩き用・最小ライン)

よければ、こちらも

第2号の方の請求は、特別なものではありません。病名の判断は事務の仕事ではないと知っておく。受付では3点を確かめる。変わり目が来たら、資格と負担割合を確かめ直す。この3つだけで、少ない件数でも落ち着いて進められます。今日は、40〜64歳の方をリストアップするところまでで十分です。

夕方の介護事業所の事務室で、利用者一覧の確認を終えてファイルを閉じ、窓の外のやわらかな夕焼けを見ながらほっとした笑顔を浮かべている事務担当者

「40〜64歳の方って、何か違うんだっけ?」と立ち止まれたのは、その方の請求を、ほかの方と同じようにきちんと通したいと思っていたからです。

働き盛りの年代で介護が必要になった方とご家族は、思いがけない変化のなかで、たくさんの手続きに向き合っています。その方の請求を静かに正しく通すことは、目立たないけれど、暮らしの立て直しを裏から支える仕事です。今日、一覧に1行書き足したなら、それはもう、その方の次の一年の安心を用意し始めています。