
介護事業所の電話応対|事務が安心して受けられる受け方の型
月末の請求作業で、ちょうど数字を追っていたところに電話が鳴る。出てみると、ご家族から「母は最近どうしていますか」。フロアの様子は分からないし、どこまで話していいのかも分からない。「確認して、折り返します……」と言いながら、名前と番号を聞きそびれていた——。そんな冷や汗、一度はありますよね。
大丈夫です。事務の電話応対は、話し上手である必要はありません。「その場で答えること」と「いったん預かること」の線引きを決めて、型どおりに受けるだけで、ぐっと落ち着いて出られるようになります。事業所の電話は、ご家族や地域の方にとって「最初に触れる窓口」です。その窓口を事務が支えていること自体、ちゃんと意味のある仕事です。今日は、介護事業所の事務が電話を受けるときの型を、一緒に整理していきましょう。
結論:介護事業所の電話応対は、①事業所名と自分の名前を名乗る → ②相手・用件・連絡先を聞き取る → ③担当者へ取り次ぐか、伝言メモで預かる → ④折り返しの時間を伝えて、約束どおりに返す、の4ステップが基本です。利用者の様子・在籍の有無・病状など個人情報にかかわる質問は、事務がその場で答えず、相手を確かめたうえで担当者から返すと決めておくと、迷いがなくなります。
事務の電話応対で、何が起きているか
介護事業所にかかってくる電話は、実はかなり種類が多いです。
- ご家族から:様子の問い合わせ、面会の相談、利用料や請求書の質問
- 利用者ご本人から:送迎時間の確認、利用日の変更、体調不良でのお休みの連絡
- 関係機関から:ケアマネ事業所、病院・訪問看護、市区町村(保険者)、国保連
- それ以外:入所・利用の問い合わせ、業者からの営業、ときどき身元のはっきりしない問い合わせ
事務が迷いやすいのは、この「種類の多さ」そのものです。請求の質問ならその場で答えられても、体調のことや、ほかの事業所からの照会は、答えていい範囲がすぐには判断できません。迷う電話ほど、その場で答えを出そうとしなくていい。まずはここを覚えておくと、少し気持ちが楽になります。
具体例:よくある「あとで困った」電話
たとえば、こんな場面です。
- 「〇〇さんって、そちらに入っていますか?」と聞かれて、つい「はい、いらっしゃいますよ」と答えてしまった。あとで、ご家族が面会を制限したいと話していた相手だと分かった
- 送迎の時間変更の電話を受けたが、メモが机の上に埋もれて、運転担当に伝わらなかった
- 「折り返します」と言ったものの、誰が折り返すかを決めておらず、夕方にご家族から「まだですか」と再度お電話をいただいた
- ケアマネからの急ぎの連絡を、担当の相談員が外出中のまま翌日まで預かってしまった
どれも、応対した人の気づかいが足りなかったわけではありません。受け方の型と、伝言の置き場所が決まっていなかっただけです。
影響:型があると、ご家族にも現場にも安心が届く
電話応対の型が決まっていると、次のような変化があります。
- 個人情報の「うっかり」が減る:在籍の有無や様子を、相手を確かめる前に話してしまうことがなくなります(個人情報の扱いの基本は個人情報の同意と扱いの基本もあわせてどうぞ)
- 伝言が消えない:誰が受けても同じ項目でメモが残るので、現場への引き継ぎが確実になります
- ご家族の「待たされる不安」が減る:「〇時ごろまでに担当からお電話します」と時間を伝えるだけで、相手の安心感は大きく変わります
- 事務の心の負担が軽くなる:「分からないことは預かっていい」と決まっているだけで、電話が鳴るたびの緊張がやわらぎます
明日やること:受け方の型を4ステップで

一度に全部そろえなくて大丈夫です。まずは、次の4ステップを「事業所の型」として決めておきましょう。
① 名乗る:事業所名と自分の名前をはっきりと
「お電話ありがとうございます。〇〇デイサービス、事務の△△です」
最初に自分の名前まで名乗っておくと、相手が折り返しのときに「△△さんに話した件で」と言いやすくなります。忙しいときほど早口になりやすいので、事業所名だけはゆっくりを意識すると十分です。
② 聞き取る:「誰から・何の用件で・どこへ返すか」
聞き取る項目は、次の4つに絞ります。
- 相手のお名前と立場(ご家族なら続柄、関係機関なら事業所名)
- どの利用者さんについてか
- 用件(様子の問い合わせ/利用日の変更/請求の質問など)
- 折り返し先の電話番号と、つながりやすい時間帯
電話番号は、聞いたら必ず復唱します。「念のため、復唱いたします。090の……でよろしいでしょうか」。この一言で、伝言の空振りがぐっと減ります。
③ 取り次ぐ:答えていい範囲と、預かる範囲を分ける
ここが事務の電話応対でいちばん迷うところです。事業所の中で、あらかじめ線を引いておきましょう。
事務がその場で答えてよいことの例
- 事業所の所在地・営業日・電話がつながる時間
- 利用料の支払い方法、請求書の送付時期など、事務の担当業務の一般的な内容
- 「担当の者に確認して、折り返しご連絡します」という今後の流れ
いったん預かって、担当者から返すことの例
- 利用者の様子・体調・病状、生活の中での出来事
- 利用者がその事業所を利用しているか・入所しているか(在籍の有無)
- ほかの事業所・医療機関からの情報の照会
- 苦情やご不満のお申し出(受け止め方は苦情の初期対応と記録の残し方で整理しています)
在籍の有無は、つい答えてしまいやすいのですが、それ自体が大切な個人情報です。相手が名乗ったご家族であっても、事務だけで本人確認まではしにくいものです。「確認して、担当からお電話いたします」と預かって、事業所に登録されている連絡先かどうかを担当者が確かめてから返す流れにしておくと安心です。どこまでを誰が答えるかは、事業所の個人情報の取扱方針や、利用者・ご家族との取り決めに合わせて、管理者と一度すり合わせておいてください。
担当者がその場にいれば取り次ぎ、不在なら伝言メモに残します。伝言メモの項目を決めておくと、誰が受けても同じ質で残せます。
- 受けた日時・受けた人
- 相手のお名前・立場・電話番号
- どの利用者さんについてか
- 用件(一言で)
- 急ぎかどうか/折り返しの約束の時間
メモの置き場所も決めておきましょう。担当者の机に置くだけだと埋もれやすいので、業務チャットに同じ内容を送る、ホワイトボードの「伝言欄」に貼る、など事業所で一つに決めておくと、現場への伝わり方が安定します。
④ 折り返す:時間を伝えて、約束を守る
「本日15時ごろまでに、担当の□□からお電話いたします」
時間を添えるだけで、相手は「いつ来るか分からない電話」を待たずに済みます。もし担当者がつかまらず約束の時間に間に合いそうにないときは、事務から一度「もう少しお待ちください」とご連絡するだけでも、印象は大きく変わります。
折り返しが済んだら、伝言メモに「□□が〇時に折り返し済」と書き足して完了です。誰が・いつ返したかが残っていれば、次に同じ方から電話があったときも慌てずに済みます。
こんな電話のときは
- 体調不良で「今日はお休みします」:お休みの連絡は、その日の送迎・食事・請求(キャンセル扱い)に関わります。受けたらすぐ、送迎担当とフロアへ伝えましょう
- 聞き取りにくい・早口で要点がつかめない:「大切なことなので、もう一度だけうかがえますか」とお願いして大丈夫です。聞き返すことは失礼ではありません
- 営業の電話:「担当の者から必要があればご連絡いたします」と、社名と番号だけ預かれば十分です
- 身元がはっきりしない問い合わせ:利用者のことは何も答えず、お名前と連絡先をうかがって「確認いたします」とだけ伝え、管理者に共有します
今日からできるチェックリスト
- 事業所名と自分の名前を名乗って電話に出ているか
- 相手の名前・立場・どの利用者さんか・用件を聞き取っているか
- 折り返し先の電話番号を復唱しているか
- 「事務が答えてよいこと」と「預かること」の線を、管理者とすり合わせたか
- 在籍の有無や様子の問い合わせを、担当者に預ける流れになっているか
- 伝言メモの項目(日時・相手・利用者・用件・急ぎか)が決まっているか
- 伝言の置き場所(業務チャット・伝言欄など)が一つに決まっているか
- 折り返しの時間を伝え、済んだら「折り返し済」と記録しているか
全部を今日そろえなくて大丈夫です。まずは、伝言メモの項目を5つ決めて、電話の横に置いておくところからで十分です。
締めに
電話応対は、請求や書類のように数字で成果が見える仕事ではありません。でも、ご家族が不安な気持ちで事業所に電話をかけたとき、最初に聞くのは事務のあなたの声です。「確認して、〇時ごろまでに担当からお電話しますね」。その一言で、受話器の向こうの方はきっと少しほっとしています。
答えられないことがあっても大丈夫です。ていねいに預かって、確実に届ける。それができている時点で、あなたはもう立派に事業所の窓口を支えています。

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