介護事業所の事務室で、職員ごとの書類ファイルを開き、1枚ずつ確かめながら少し考え込んでいる事務担当者

介護職員の秘密保持誓約書、整え方と保管の手順を一緒に

運営指導の準備で、職員ファイルを1人ずつ開いていく。雇用契約書、資格証の写し、研修の記録。そして「秘密保持の誓約書」。……あれ、この方の分がない。数年前から勤めているパートさんの分も、見当たらない。入職のときに渡したはずなのに、回収できていたのかどうか、もう誰にも分からない。

そんなふうに手が止まった方、きっと少なくないと思います。誓約書は、入職のバタバタの中で「書いておいてくださいね」と渡して、そのままになりやすい書類です。それは誰かの手抜きではなく、入職の手続きが多すぎて、1枚くらい抜けても気づける仕組みがなかっただけ。今日は、その抜けを落ち着いて埋めて、これから抜けない形に整えるところまで、一緒に進めていきましょう。

結論:①まず在籍している職員全員について、誓約書があるかを一覧で確かめる → ②足りない方には、今からでも取り交わせば大丈夫。事情を一言添えてお願いする → ③誓約書には「在職中も、辞めたあとも利用者さん・ご家族の秘密を漏らさない」ことをはっきり書く → ④入職時・在職中(年1回の研修)・退職時の3つのタイミングで確かめる流れを作る、の順で進めます。様式に決まった形はなく、細かな扱いは指定権者やサービス種別によって異なることがあるため、最終的には指定権者の手引き等でご確認ください(本記事は2026年10月時点の一般的な整理です)。

何が起きているのか:秘密保持は「辞めたあと」まで求められる

介護の運営基準には、秘密保持についての決まりがあります。中身を事務の言葉に置き換えると、次の3つです。

このうち2つ目が、誓約書のいちばんの役割です。辞めた方に、あとから約束をお願いするのは難しい。だから雇うときに、辞めたあとのことまで取り決めておく。運営基準の解釈通知でも、雇用の時点で取り決めておくことが措置の例として示されています。運営指導で「秘密保持の措置はどうしていますか」と聞かれたとき、いちばん分かりやすく示せるのが、署名のある誓約書や雇用契約書の条項なのです。

3つ目の利用者さん・ご家族からの同意は、契約のときの話になります。こちらは介護の個人情報、同意の取り方と扱いの基本を一緒ににまとめているので、今日は職員側の誓約書に絞ります。

誓約書に入れておきたい項目

様式に決まった形はありません。事業所の就業規則や雇用契約書に秘密保持の条項がある場合は、それと食い違わないようにそろえます。入れておきたいのは、次のような項目です。

罰則や損害賠償の書き方は、労働関係の法律との兼ね合いもあるため、事業所だけで決めずに、社会保険労務士など専門家に相談しておくと安心です。誓約書は「縛るための書類」ではなく、利用者さんと職員の両方を守るための約束として書くと、受け取る側の気持ちもやわらかくなります。

手順:抜けを埋めて、抜けない流れを作る

入職時に誓約書へ署名する場面、在職中に研修で秘密保持を確かめる場面、退職時に書類やIDカードを返す場面の3つを左から右に並べた説明図
「入職時」「在職中」「退職時」の3つのタイミングで確かめると、誓約書が抜けにくくなります

その1:在籍している職員全員の一覧に「誓約書」の欄を足す

職員名簿や、入職・退職の管理表に「秘密保持の誓約書」の列を1つ足して、1人ずつ「あり(日付)」「見当たらない」を書いていきます。常勤の方だけでなく、パートさん、夜勤専従の方、短時間の方、兼務の方も全員です。派遣の方は、派遣元との契約で秘密保持がどう決まっているかを確かめておきます。

その2:見当たらない方には、今から取り交わす

見当たらなくても、慌てなくて大丈夫です。気づいた今、取り交わせば、それがその方の措置になります。日付は取り交わした当日のまま書きます(さかのぼった日付にはしません)。お願いするときは、責める言い方にならないよう、こんな一言を添えるとやわらかくなります。

事業所側の保管の問題として伝えれば、職員さんも身構えずに書いてくれます。

その3:入職のときの書類一式に、誓約書を組み込む

雇用契約書と一緒に渡し、その場で署名してもらって回収するのがいちばん確実です。「持ち帰って書いてきてください」にすると、回収が抜けやすくなります。入職手続き全体の流れは介護職員の入職・退職手続き|もれなく回す事務チェックリストにまとめています。

その4:在職中は、年1回の研修で思い出してもらう

誓約書は、書いたら終わりではありません。個人情報や虐待防止などの研修の中で、「SNSに載せない」「記録を持ち帰らない」といった具体的な場面を5分だけ話題にすると、約束が現場の言葉になります。研修の組み方は介護の研修義務、年間計画の立て方と受講管理を一緒に整理も参考にしてください。

その5:退職のときに、返却と「辞めたあとも」を確かめる

退職のときは、鍵・IDカード・書類・データの返却を確かめ、介護ソフトや記録用タブレットのアカウントを止めます。あわせて、入職時の誓約書に「退職後も守る」と書いてあることを、一言で確かめ合う。事業所によっては、退職時にあらためて確認書をもらうところもあります。

その6:署名した誓約書の置き場所を決める

職員ごとの個人ファイルに綴じるのが基本です。誓約書も職員の個人情報なので、鍵のかかる場所で保管します。退職した方の分も、すぐに捨てずに残しておきます。保存の考え方は介護の書類、保存年限は何年?迷わないファイリングを一緒に整理にまとめています。

具体例:通所介護での見直し

ある通所介護の事業所で、在籍職員18人分を確かめたときの例です(数字はイメージです)。

区分人数誓約書あり見当たらない対応
常勤8人8人0人そのまま
パート7人5人2人今月中に取り交わし
送迎ドライバー3人1人2人今月中に取り交わし
合計18人14人4人—

見当たらなかったのは4人。どの方も、入職手続きを管理者が現場で急いで行った時期の方でした。4人には「保管できていなかったので」と事情を話し、翌週までに全員分を回収できました。

送迎ドライバーさんは「介護の仕事ではないから」と書類が後回しになりがちですが、ご自宅の場所や、乗り降りのときの様子など、利用者さんの暮らしにいちばん近い情報に触れている方でもあります。職種にかかわらず、利用者さんの情報に触れる人は全員、と考えておくと迷いません。

影響:そろえておくと変わること

運営指導で聞かれても、一覧で示せます。 「全員分あります。こちらが一覧と原本です」と出せれば、確認はすぐ終わります。

職員さんが迷ったときの拠りどころになります。 「ご家族から、別の利用者さんのことを聞かれた」「知り合いに、あの施設にあの人いるよねと言われた」。そんなとき、誓約書で約束した内容が、断る理由を職員さんに渡してくれます。

退職のときに、落ち着いて送り出せます。 返却と確認の流れが決まっていれば、辞める方にも、残る職員にも、気まずさを残さずに済みます。

利用者さんとご家族の安心につながります。 自分のことが外で話されない。それは、介護サービスを安心して使い続けるための土台です。

明日やること(優先順位と代替)

  1. 職員名簿に「誓約書」の列を足して、全員分の有無を書き出す(まずは有無だけで十分です。中身の見直しはあとで)
  2. 見当たらない方を、管理者と共有する(名前を挙げて責めるのではなく、「保管できていなかった分」として)
  3. 誓約書の様式に「退職後も守る」「SNS」「持ち出し・撮影」の3点が入っているかを見る(入っていなければ、次に取り交わす分から書き足す)
  4. 見当たらない方と、新しく入る方から順に、取り交わす(全員分を一度にそろえなくても、今月中を目安に)
  5. 入職手続きのチェックリストに「誓約書:その場で署名・回収」の1行を足す

時間がない日は、1だけで構いません。一覧があれば、あとはそこを埋めていくだけです。

確認チェックリスト(持ち歩き用・最小ライン)

よければ、こちらも

一覧で有無を確かめる。足りない方とは今から取り交わす。入職・在職中・退職の3つのタイミングで確かめる。この順番で進めれば、誓約書は「探しても見つからない1枚」から「全員分そろっている1冊」に変わります。今日は、名簿に1列足すところまでで十分です。

全員分の書類がそろったファイルを机に置き、ほっとした笑顔で同僚の職員と言葉を交わしている介護事業所の事務担当者

誓約書が見当たらなくて手が止まったのは、職員さん一人ひとりの書類を、きちんと確かめようとしたからです。その1枚の向こうには、自分のことを外で話されずに、安心してサービスを使い続けている利用者さんとご家族がいます。

目立たない1枚だけれど、利用者さんと職員の両方を守る約束です。今日名簿に1列足したなら、その約束はもう、事業所の中で形になり始めています。