
介護職員の入職・退職手続き|もれなく回す事務チェックリスト
「来月の1日から、新しい方が入ります」。うれしい知らせのはずなのに、事務の頭の中では、すぐに用意するものが並びはじめます。雇用契約書、資格証のコピー、名札、介護ソフトのID……。そして同じ週に「今月末で辞めることになって」という話が重なると、「何か忘れている気がする」という落ち着かなさだけが残りませんか。
入職・退職の手続きがもれやすいのは、あなたの段取りが悪いからではありません。介護事業所では、一般的な労務の手続きに、人員基準や加算、運営指導にかかわる「介護ならではの手続き」が上乗せされるうえに、そのたびに担当や書類の置き場所がばらばらになりやすいからです。今日は、それを毎回同じ順番で回せる形にしていきましょう。
結論:①入職・退職の手続きを「労務」「介護の基準」「現場の準備」の3つの箱に分けて考える → ②それを「職員台帳」1枚にチェック欄として並べ、1人1行で進み具合を見えるようにする → ③退職のときは、人員基準・加算・変更届への影響を最初に確かめる、の3つで、手続きのもれはぐっと減らせます。社会保険・雇用保険・税の手続きは、法人の労務担当や社会保険労務士が担っていることも多いので、本記事では「事務がどこまで持つか」を分担して確かめる前提で整理します。届出の期限や様式は、指定権者(都道府県・市町村)によって違うことがあります。本記事は2026年10月時点の一般的な整理です。
入職・退職の手続きで、何が起きているか
介護事業所の入職・退職では、こんなことが同時に動きます。
- 一般的な労務の手続き:雇用契約、社会保険・雇用保険の加入や喪失、給与・税の手続き、健康診断など
- 介護ならではの手続き:資格証の確認、勤務形態一覧表の更新、人員基準や加算の要件の確認、管理者などが変わるときの変更届、認知症介護基礎研修の受講管理、秘密保持の取り決めなど
- 現場の準備と片づけ:名札、制服、鍵やIDカード、介護ソフトやタブレットのアカウント、連絡網、シフト表への反映など
どれも1つずつは難しくありません。ただ、3種類の手続きを、それぞれ別の人が別の書類で進めていると、「誰かがやっているはず」のすき間が生まれます。もれの多くは、知識不足ではなく、このすき間から出てきます。
入職のときに、3つの箱で確かめること
労務の箱(法人の労務担当・社労士と分担して確かめる)
- 雇用契約書(労働条件通知書):常勤か非常勤か、勤務時間、職種。ここは勤務形態一覧表の数え方に直結するので、事務も内容を見ておきます
- 社会保険・雇用保険の加入手続き:健康保険・厚生年金の資格取得届は、原則として入社から5日以内と期限が短めです。誰が出すのかを、入職が決まった時点で確かめておくと安心です
- 雇入時の健康診断:受診したか、または入職前3か月以内の健診結果の提出があるか
- 給与・税の書類:扶養控除等申告書、振込口座など
介護の基準の箱(ここが事務のいちばんの持ち場)
- 資格証の確認と写しの保管:原本を見て確認し、写しに「原本確認日・確認者」を書いておく。運営指導では、配置している職員の資格を確かめられることがあります。管理のしかたは介護の資格要件と資格情報の管理|確認と更新期限を一緒に整理にまとめています
- 勤務形態一覧表への反映:入職日から、常勤・非常勤の区分と勤務時間を反映します。作り方は勤務形態一覧表の作り方、提出前に押さえる順番を一緒に整理を参考にしてください
- 認知症介護基礎研修の受講予定:介護に直接携わる職員のうち、介護福祉士や初任者研修修了などの資格を持たない方は、受講が求められています。新しく採用した方には採用後1年の猶予があるので、入職の時点で「いつまでに受講するか」を台帳に書いておくのがコツです
- 秘密保持の取り決め:運営基準では、職員が辞めたあとも利用者や家族の秘密を漏らさないよう、事業所が必要な措置をとることになっています。入職時に誓約書などで取り決め、署名したものを保管します
- 管理者などが変わる場合の変更届:管理者やサービス提供責任者など、指定の届出事項にあたる職員が変わるときは変更届が必要です。期限の管理は変更届の提出期限、忘れないための小さな仕組みを一緒にが参考になります
現場の準備の箱
- 名札、制服、ロッカー、鍵やIDカード
- 介護ソフト・記録用タブレットのアカウント発行と、見られる範囲(権限)の設定
- シフト表・連絡網への追加、入職時オリエンテーションと研修の予定
退職のときは「影響の確認」から始める

退職の手続きは、入職の逆をたどれば大丈夫です。ただ、介護事業所では最初にひとつだけ、先に確かめておきたいことがあります。それは、その方が抜けたあとも、人員基準や加算の要件を満たせるかです。
- 人員基準:常勤換算数や、常勤・専従が求められる職種の配置が足りるか。数え方は常勤換算数の数え方、つまずきやすい点を一緒に整理する、足りなくなりそうなときは人員基準を満たせないとき、あわてず動く順番を一緒に整理にまとめています
- 加算の要件:有資格者の割合や、特定の資格・職種の配置が要件になっている加算は、1人の退職で要件が変わることがあります。サービス提供体制強化加算や、機能訓練指導員・看護職員の配置が要件の加算は、とくに確かめておきたいところです
- 変更届:管理者やサービス提供責任者などが辞めるときは、後任と合わせて変更届が必要になります
退職の話を聞いた日に、この3つだけ管理者と一緒に確かめておくと、後から慌てずにすみます。要件を満たせなくなりそうなら、加算の取り下げや区分の変更が必要になることもあるので、早めに指定権者に相談するのが安心です。
そのうえで、手続きを3つの箱で片づけていきます。
- 労務の箱:社会保険・雇用保険の資格喪失の手続き、離職票が必要かの確認、最終給与・源泉徴収票。担当者との分担を、入職のときと同じように確かめます
- 介護の基準の箱:勤務形態一覧表から退職日以降を外す。資格証の写しや研修の受講記録などの職員の書類は、辞めたからといってすぐ捨てずに、法人の保存ルールに沿って保管しておきます(保存年限の考え方は介護事業所の書類の保存年限を参考にしてください)
- 現場の箱:鍵・IDカード・名札・制服などの返却、介護ソフトやタブレットのアカウント停止、共有パスワードを使っていたなら変更、連絡網やシフト表からの削除
アカウントの停止は、最終出勤日の業務が終わったタイミングで行うのが基本です。記録の書きかけが残っていないかを、本人と一緒に確かめてから止めると、お互いに気持ちよく区切れます。
「職員台帳」に1人1行で並べる
3つの箱の手続きを、職員ごとに1行で見える形にしたのが「職員台帳」です。Excelでも紙でも大丈夫です。
| 氏名 | 区分 | 予定日 | 労務 | 資格証 | 勤務表 | 基準・加算 | 変更届 | 研修 | 秘密保持 | 鍵・ID | アカウント |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Cさん(介護職) | 入職 | 11/1 | 労務担当に依頼済 | ✓ 原本確認10/20 | ✓ | 影響なし | 不要 | 基礎研修 来年10月まで | ✓ | ✓ | 10/31発行予定 |
| Dさん(看護職員) | 退職 | 10/31 | 労務担当に依頼済 | 写し保管 | 11/1以降外す | 加算の要件を管理者と確認中 | 不要 | — | 入職時取得済 | 10/31回収 | 10/31停止 |
(説明のための例です)
この表のポイントは、3つです。
- 「済んだ」だけでなく「誰に頼んだか」も書く。労務の手続きを社労士や本部が持っているなら「依頼済」と書けば、事務の手からは離れたことが分かります
- 「基準・加算」の欄を、退職のときこそ必ず埋める。「影響なし」と書けることが、いちばんの安心材料になります
- 空欄のまま翌月に持ち越さない。まだ分からないことは「確認中」と書いて日付を入れておけば、見失いません
運営指導の前に勤務表と実態を見比べるときも、この台帳があると話が早く進みます。整合のとり方は勤務表と勤務実態のずれ、運営指導の前に整合をとる確認手順にまとめています。
影響:台帳があると、入れ替わりの月も落ち着いて回せる
「何か忘れている気がする」が、空欄として見えるようになります。 不安の正体が台帳の空いたマスになるので、あとはそこを埋めるだけです。
退職による人員基準・加算への影響に、早く気づけます。 退職の話を聞いた日に確かめておけば、後任の採用や届出の相談に時間を使えます。
運営指導で職員の書類を聞かれても、1行ずつ答えられます。 資格証、研修、秘密保持の取り決めがどこにあるか、台帳から追えます。
担当が代わっても引き継げます。 手続きの進み具合が、誰かの記憶ではなく表に残っているからです。
明日やること(優先順位と代替)
- いま決まっている入職・退職の予定を、全員書き出してみる(名前と予定日だけで十分です。5分で終わります)
- その中に退職予定の方がいれば、人員基準・加算・変更届への影響を管理者と一緒に確かめる(「影響なし」と分かるだけで、ひとつ安心が増えます)
- 社会保険・雇用保険・給与の手続きを、誰が担っているかを確かめる(労務担当、社労士、本部など。分担が分かれば、事務の持ち場がはっきりします)
- 職員台帳の枠を作る(上の表の列をそのまま使って大丈夫です)
- 在職中の職員について、秘密保持の誓約書と認知症介護基礎研修の受講状況を、分かる範囲で台帳に写す(全員分でなくても、気になる方からで十分です)
全部を今日やらなくて大丈夫です。1と2だけでも、次の入れ替わりの月は、ずいぶん落ち着いて迎えられます。
確認チェックリスト(持ち歩き用・最小ライン)
入職のとき
- 雇用契約書の内容(常勤・非常勤、勤務時間、職種)を事務も確認した
- 社会保険・雇用保険の手続きを、誰が出すか確かめた
- 雇入時の健康診断の受診、または健診結果の提出を確かめた
- 資格証の原本を確認し、写しに確認日と確認者を書いた
- 勤務形態一覧表に、入職日から反映した
- 資格を持たない介護職員なら、認知症介護基礎研修の受講予定を台帳に書いた
- 秘密保持の誓約書などを取り交わし、保管した
- 管理者などの変更にあたる場合、変更届の期限を確かめた
- 名札・鍵・IDカード・介護ソフトのアカウントを用意した
退職のとき
- 退職の話を聞いた日に、人員基準・加算・変更届への影響を管理者と確かめた
- 社会保険・雇用保険の喪失手続きを、誰が出すか確かめた
- 勤務形態一覧表から、退職日以降を外した
- 鍵・IDカード・名札・制服の返却を受けた
- 介護ソフト・タブレットのアカウントを停止し、共有パスワードを使っていれば変更した
- 資格証の写しや研修記録を、法人の保存ルールに沿って保管した
よければ、こちらも
- 人員の数え方を見直すなら 常勤換算数の数え方、つまずきやすい点を一緒に整理する、管理者とサービス提供責任者の配置基準、迷う点を一緒に整理 をどうぞ。
- 研修の年間の回し方は 委員会の年間計画と議事録|整え方を一緒に整理する が近いテーマです。
- 届出のもれを防ぐなら 変更届の提出期限、忘れないための小さな仕組みを一緒に にまとめています。
一度に全部そろえなくて大丈夫です。手続きを3つの箱に分ける。職員台帳に1人1行で並べる。退職のときは、最初に影響を確かめる。この3つだけで、入れ替わりの月のあの落ち着かなさは、ずいぶん小さくなります。今日は、予定している入職・退職を書き出すところまでで十分です。

職員の入れ替わりの月に「何か忘れている気がする」と感じるのは、1人ひとりの手続きを、最後まで丁寧に終わらせたいと思っているからです。
新しく入る方が安心して初日を迎えられること。辞めていく方が気持ちよく区切りをつけられること。そのどちらも、事務の小さな確認の積み重ねが支えています。今日、台帳に1行書いたなら、それはもう、次に来る仲間を迎える準備になっています。