通所介護事業所の事務室で、利用者ごとの算定時期を書き出した一覧表と卓上カレンダーを見比べ、口腔・栄養スクリーニング加算の算定月を確認している事務担当者

口腔・栄養スクリーニング加算|Ⅰ・Ⅱの違いと6か月管理を一緒に

「口腔・栄養スクリーニング加算、この方は今月算定できるんだったかな」。通所の請求をまとめていて、利用者一覧の前で手が止まる。実施したのは現場のスタッフで、記録は残っているはずなのに、Ⅰなのか、Ⅱなのか、そもそも6か月あいているのか——確かめたいことが一度に増えて、月末の時間がすっと溶けていく。あの感覚、本当によく分かります。

でも大丈夫です。この加算は「①何をする加算か(中身)」「②Ⅰ・Ⅱのどちらになるか(区分)」「③前回からどれだけあいたか(時期)」の3つに切り分けると、迷いどころがぐっと減ります。今日は、事務が押さえる最小ラインと、利用者ごとに時期を追える一覧の形まで、一緒に確認していきましょう。

結論:まず①口腔と栄養の「入口のチェック」をして、結果を利用者・ご家族に伝え、ケアマネジャーへ情報提供するところまでが一続きだと押さえる→②口腔と栄養の両方を見たならⅠ、片方だけならⅡ、という分かれ方を、関連する他の加算(栄養アセスメント加算・栄養改善加算・口腔機能向上加算など)の算定状況とセットで確認する→③6か月に1回という限度を、利用者ごとに「前回算定月/次に算定できる月」で一覧にして管理する、の順で整えると回ります。単位数・併算定の可否・対象となるサービス種別は改定で動くため、最終判断は最新の単位数表・厚生労働省の解釈通知と、指定権者(自治体)の案内で確認してください。

なぜ、ここでつまずきやすいのか

どれも、担当者の注意力の問題ではありません。仕組みとして追いにくいだけです。いったん「中身・区分・時期」の3つに分けて見ていきましょう。

その1:そもそも何をする加算か(中身)

この加算の「スクリーニング」は、専門的な評価の前にある“入口のふるい分け”です。深く掘り下げるというより、気になるサインが出ていないかを短く確かめる作業にあたります。

スクリーニングとは、多くの人の中から「詳しく見たほうがよい人」を早めに見つけるための、簡単な確認のことです。健康診断で「要精密検査」の人を拾い上げるイメージに近いものです。

見るのは、大きく次の2方向です。

口腔の側で気にかけること

栄養の側で気にかけること

大事なのは、これが歯科や栄養の専門職でなければできない評価ではないという点です。日々そばで見ている介護職員などが確認できる範囲の項目で組み立てられています。「専門職がいないと無理」と思って手が止まっていた事業所も、まずはここから見直せます。

そして、確認して終わりではありません。

  1. スクリーニングを行う
  2. 結果を利用者・ご家族に説明する
  3. 担当のケアマネジャーへ情報提供する

この3つでひとそろいです。事務としては、③のケアマネジャーへの情報提供が抜け落ちていないか、が確認どころになります。ここは記録に残りにくく、あとから「やったはずなんですが」となりやすい場所です。

その2:Ⅰ・Ⅱのどちらになるか(区分)

通所介護の事務担当者が、口腔の確認・栄養の確認・6か月ごとの時期という3つの場面が並んだ図を、明るい表情で指し示している説明図
「口腔」と「栄養」の両方を見ればⅠ、片方だけならⅡ。そのうえで「6か月」あいているかを確かめる

区分の考え方は、いったん次のようにつかむと迷いにくくなります。

単位数は(Ⅰ)のほうが高く、(Ⅱ)は低めに設定されています。

ここで引っかかりやすいのが、「うちは両方きちんと見ているのに、なぜⅡになるのか」という場面です。理由は、関連する他の加算との重なりにあります。

たとえば、栄養の側で栄養アセスメント加算や栄養改善加算を算定している方、口腔の側で口腔機能向上加算を算定している方の場合、その領域はすでに別の加算で手厚く見ている扱いになります。すると、このスクリーニング加算では残るもう片方だけが対象になり、区分は(Ⅱ)に寄っていく、という関係です。

つまり、区分は「現場がどれだけやったか」ではなく、その利用者について今月どの加算を算定しているかで決まります。逆に言えば、利用者ごとの加算の組み合わせを一覧にしておけば、区分の判断はほぼ機械的になります。

併算定できる・できないの細かい組み合わせと、対象となるサービス種別(通所系・居住系など)は、改定のたびに整理が入る部分です。自分の事業所がどこに当たるかは、最新の単位数表と解釈通知、自治体の案内で必ず確認してください。ここは「覚える」より「毎回そこを見る」と決めてしまうほうが、結果的に早く、確実です。

その3:前回からどれだけあいたか(時期)

この加算は6か月に1回が限度です。毎月算定できるものではなく、前回算定した月から6か月が経過していることが前提になります。

やっかいなのは、利用開始の時期が人それぞれなので、算定できる月が利用者ごとにバラバラに回ってくることです。記憶や勘で追うと、必ずどこかで漏れます。

そこで、次の形の一覧を1枚だけ作っておくと安定します。

利用者前回算定した月次に算定できる月区分(前回)併算定している加算
A様2026年3月2026年9月Ⅰなし
B様2026年5月2026年11月Ⅱ口腔機能向上加算
C様2026年2月2026年8月Ⅰなし

この表があると、月初に「今月が“次に算定できる月”の人」を見るだけで済みます。C様のように今月に当たる方がいれば、現場へ「今月このタイミングで確認をお願いします」と先に声をかけられます。事務が先回りできると、現場も慌てずにすみます。

なお、算定の可否は請求のときにひっくり返すのが一番つらい部分です。「実施してから請求で確かめる」ではなく「月初に実施の予定を立てる」という向きにできると、月末の負担がはっきり変わります。

記録として残しておきたいもの(最小ライン)

すべてを長文で残す必要はありません。あとから「いつ・誰が・何を見て・どう伝えたか」がたどれれば十分です。

記入例(1ケース・短くて構いません)

この5行が残っていれば、運営指導で「実施していますか」と聞かれたときも、あわてずに1枚を差し出せます。

影響:ケアの入口が、記録として見えるようになる

この加算をきちんと回すと、算定できるかどうか以上に効いてくることがあります。体重の減少や、むせの増加といった小さな変化が、6か月に1回、必ず言葉になって記録に残るということです。

現場の方はきっと日々気づいています。ただ、気づきが会話の中だけで流れていくと、ケアマネジャーにも、ご家族にも、次の担当者にも渡りません。この加算は、その気づきを外へ渡す仕組みでもあります。

そして、記録がそろっていれば、運営指導のときも「実施の記録」「説明の記録」「情報提供の記録」を順に示せます。改定で単位数や要件が動いても、変わった差分だけを追えばよくなるので、読み直しの負担も軽くなります。

明日やること(優先順位と代替)

  1. 直近6か月の算定実績を、利用者ごとに書き出してみる(請求ソフトの実績出力でも、手書きの一覧でも構いません)
  2. 「前回算定した月」から6か月後を計算し、「次に算定できる月」の列を埋める
  3. 今月が“次に算定できる月”に当たる方を拾い出し、現場へ実施の声かけをする
  4. 併算定している加算を照らし合わせ、前回のⅠ・Ⅱの区分が合っていたか1名分だけ見直す(全員でなくて大丈夫です)
  5. ケアマネジャーへの情報提供の記録が残っているか、1名分だけたどってみる
  6. 単位数・併算定の可否・対象サービス種別を、最新の単位数表と自治体の案内で確認する

全部を今日やらなくて構いません。1と2だけでも、来月の月末がずいぶん静かになります。

確認チェックリスト(持ち歩き用・最小ライン)

よければ、こちらも

栄養まわりをさらに手厚く見ていく段階に入ったら栄養マネジメント強化加算の要件と記録の整え方を一緒にが続きになります。利用者ごとに計画を立てて記録し、見直していく流れは個別機能訓練加算の要件と計画書、整える順番を一緒にとも重なります。あわせて、時期の管理そのものを仕組みにする加算の算定漏れを防ぐ、月次点検のしかた、算定できなくなる場面を先回りで防ぐ加算が算定できなくなる主なケースと、普段からの予防策、月々の請求全体の流れは介護報酬請求の月次ミスを防ぐ、提出前チェックリストも参考にしてください。

利用者ごとの算定時期を整理し終えた一覧表を手に、窓辺で肩の力を抜いてやわらかくほほえんでいる介護事業所の事務担当者

一度で全部をそろえなくて大丈夫です。「中身を現場と共有する」「Ⅰ・Ⅱを加算の組み合わせで決める」「6か月の時期を一覧で追う」。この順に一つずつ置いていけば、口腔・栄養スクリーニング加算はちゃんと形になっていきます。今日は、利用者ごとの「次に算定できる月」を書き出すところまでで十分です。

食事のときの小さなむせに、誰かが気づいて、それが記録になって、次の人へ渡っていく。その道筋を静かに整えているから、介護の現場は今日も止まらずに動いています。

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