介護施設の事務室で、利用者ごとの評価月をまとめた一覧表と卓上カレンダーを見比べ、次の見直しの時期を確認している事務担当者

排せつ支援加算・自立支援促進加算|要件と記録を一緒に整理

「この方、排せつ支援加算の対象でしたよね?」

現場からそう聞かれて、返事に一拍おいてしまう。対象だった気もするし、前回の評価がいつだったかは思い出せない。自立支援促進加算のほうも算定しているけれど、あれは医師の評価が要るはずで、直近の記録がどこにあるのか、すぐには出てこない——。

そんな時間を過ごしたことがあるなら、まずお伝えしたいことがあります。この2つの加算が分かりにくいのは、要件が難しいからではなく、時計が2本走っているからです。評価は6か月ごと、支援計画の見直しは3か月ごと。そこに毎月の請求が重なるので、頭の中で3つのカレンダーを同時に回すことになります。覚えきれないのは当たり前です。

大丈夫です。この2つは、「誰が評価するか」と「いつ見直すか」の2点で並べ直すと、驚くほど整理できます。今日は、その並べ方と、事務が持っておくと楽になる一覧表の形まで、一緒にほどいていきましょう。

結論:まず①どちらの加算も「6か月ごとの評価」と「3か月ごとの支援計画の見直し」という二重のリズムでできている、と押さえる → ②評価する人が違う(排せつ支援=医師、または医師と連携した看護師/自立支援促進=医師)ことを確認する → ③利用者ごとに「次の評価月/次の見直し月/LIFE提出の済・未」が並んだ一覧表を1枚持つ、の順に整えると回り始めます。どちらもLIFE(科学的介護情報システム)への情報提出とフィードバックの活用まで含めて一続きの要件です。単位数・区分の判定・対象となるサービス種別・併算定の可否は改定や自治体の解釈で動くため、最終的な判断は最新の単位数表と厚生労働省の解釈通知、指定権者(都道府県・市区町村)の案内でご確認ください(本記事は2026年9月時点の一般的な整理です)。

なぜ、ここでつまずきやすいのか

自信を持って答えにくいのには、はっきりした理由があります。

どれも、担当者の注意不足ではありません。構造上、頭の中だけでは持てない情報なのです。だから、紙に出します。

その1:2つの加算に共通する骨格は同じ

先に、共通部分から押さえてしまいましょう。ここが分かると、残りは差分だけになります。

どちらの加算も、求めているのは次の流れです。

1. 入所時に評価する

入所した時点で、その方について評価を行います。ここが起点です。

2. 少なくとも6か月に1回、評価をやり直す

一度きりの評価では終わりません。状態は動くので、おおむね6か月の周期で評価し直すことが求められます。

3. 対象と判断された方に、多職種で支援計画を作る

評価の結果、支援によって改善が見込まれる方について、多職種が共同して支援計画を作ります。医師・看護職員・介護職員・介護支援専門員など、その方に関わる職種が入ることが前提です。ばらばらに行われていた工夫を、1枚に集めるイメージです。

4. 計画に沿って支援して、少なくとも3か月に1回見直す

作った計画のとおりに支援を行い、3か月ごとに計画そのものを見直します。状態が変わっていなくても、「見直して、継続と判断した」ことを記録に残します。ここは後述しますが、いちばん記録が空きやすい場所です。

5. LIFEへ提出して、フィードバックを活かす

評価などの情報を科学的介護情報システム(LIFE)へ提出し、返ってくるフィードバック票を次の見直しに活かします。提出が漏れると、支援そのものは行っていても要件を満たさないことになります。LIFEまわりの組み立て方は科学的介護推進体制加算(LIFE)、まず運用でつまずかないための整理にまとめています。

評価・支援計画の見直し・LIFEへの提出という3つの場面を横に並べ、それぞれの時期を事務が追いかける流れを示した説明図
6か月ごとの評価月、3か月ごとの見直し月、そして提出。この3つを1枚の表で追えるようにするのが事務の持ち場です

この5つがつながって回っていること。ここが要件の中心です。評価はしているが計画がない、計画はあるが3か月見直していない、支援はしているがLIFEに出していない——このどれか1本が切れると、要件を満たさないことになります。

なお、これらの加算が設定されているのは施設系のサービスと短期入所を中心とした種別です。自分の事業所が対象になるか、今どの区分で体制を届け出ているかは、最新の単位数表と体制届の控えで必ず確認してください。体制届そのものの出し方は加算の体制届、出し方と提出期限を落ち着いて確認するに整理しています。

その2:違いは「誰が評価するか」と「何を見るか」

骨格が同じだからこそ、混ざります。差分だけを取り出しておきましょう。

排せつ支援加算

見ているもの:排せつに介護を要する方について、適切な対応を行うことで要介護状態の軽減が見込まれるか。おむつの使用や排尿・排便の状態が、支援によって良い方向へ動く余地があるかどうかを評価します。

評価する人:医師、または医師と連携した看護師です。ここが実務上とても大きい点で、施設に医師が常時いなくても、看護師が医師と連携する形で評価する道が用意されています。

区分の考え方:この加算には区分があり、大きく言うと、

という組み立てになっています。改善の度合いに応じて区分が分かれるため、「うちはどの区分で届け出ているか」を先に確認するのが早道です。区分の判定条件は細かく定められていて改定でも整理が入る部分なので、ここは覚えるのではなく、毎回、最新の解釈通知と自治体の案内を開くと決めてしまうほうが結果的に確実です。

自立支援促進加算

見ているもの:入所者の尊厳の保持と自立支援という観点からの医学的評価です。寝たきりを防ぎ、離床や座位を保つこと、食事・排せつ・入浴といった生活行為を自分でできる範囲を広げていくこと。その方に何が見込めるかを、医学的な目で見ます。

評価する人:医師です。排せつ支援加算と違い、こちらは医師による医学的評価が起点になります。「誰が評価するか」がそのまま段取りの違いになるので、ここは取り違えないようにしたいところです。

支援の中身:医学的評価の結果、自立支援が必要と判断された方について、多職種で支援計画を作り、医師の指示に基づいて実施します。離床の時間を延ばす、食事を居室ではなく食堂でとる、排せつをトイレで行う機会を増やす——現場ではすでに行われていることが多いはずです。それを計画と記録の形にする、という順番になります。

事務が押さえる差分は、たった1行です。
排せつ支援加算=医師、または医師と連携した看護師が評価。自立支援促進加算=医師が評価。
ここが分かると、「次の評価月です」と誰に声をかければいいかが決まります。

その3:3つの時計を、1枚の表に落とす

要件が分かっても、続かなければ意味がありません。ここが事務のいちばんの持ち場です。

利用者ごとに「次にやる月」を持つ

作るのは、次の列だけの表で十分です。エクセルでも、手書きの一覧でも構いません。

氏名入所日加算前回の評価月次の評価月前回の見直し月次の見直し月LIFE提出(済/未)

ポイントは2つあります。

ひとつは、「やった月」ではなく「次にやる月」の欄を必ず作ること。人は済んだことより、締切のほうを見て動きます。

もうひとつは、評価(6か月)と見直し(3か月)の列を分けること。同じ「見直し」という言葉でひとまとめにすると、必ず混ざります。列が分かれていれば、混ざりようがありません。

月初に3分だけ見る

毎月の請求作業を始める前に、この表を開いて「今月が満期の方」を拾います。拾ったら、その名前を渡すだけ。渡す先は、排せつ支援なら看護職員、自立支援促進なら医師(の窓口になっている職員)です。

事務がやるのは、評価そのものではなく評価の呼び水です。ここを引き受けると、実は現場の負担も減ります。「言われてから慌てる」がなくなるからです。

ほかのLIFE関連加算と、表を統合してしまう

この2つの加算は、単独で走らせるとかえって重くなります。同じ施設で算定していることが多い褥瘡マネジメント加算の要件と記録の残し方を一緒に整理するや栄養マネジメント強化加算の要件と記録の整え方を一緒に、口腔・栄養スクリーニング加算|Ⅰ・Ⅱの違いと6か月管理を一緒にと、満期の表を1枚に統合してしまうのがおすすめです。周期は加算ごとに違いますが、見る場所がひとつなら忘れません。月次で拾う流れそのものは加算の算定漏れを防ぐ月次点検のしかたを一緒に整理するにまとめています。

声のかけ方(そのまま使える一言)

満期の名前を渡すとき、言い方ひとつで受け取られ方が変わります。責める確認ではなく、そろえる確認にしましょう。

看護職員へ(排せつ支援加算)

「お疲れさまです。排せつ支援加算の評価が、今月で6か月になる方が3名います。お名前を一覧にしておきました。先生とご相談いただけるタイミングで大丈夫ですので、実施できたら日付だけ教えてください」

医師の窓口になっている職員へ(自立支援促進加算)

「自立支援促進加算の医学的評価が、今月満期の方のリストです。次回の回診に合わせていただければ助かります。評価票はこちらで準備して机に置いておきますね」

3か月の見直しのとき

「支援計画の見直し月です。お変わりがなければ『継続』で構いませんので、見直した日付だけ残していただけますか」

最後の一言が、地味に効きます。「変わっていなくても記録は要る」が伝わるからです。

記録として残しておきたいもの(最小ライン)

運営指導で見られるのは、たいてい「要件のとおりに、実際にやっていたか」です。次のものがひとそろいで出てくれば、説明はかなり楽になります。

いちばん抜けやすいのは、「変更なし」の見直し記録とフィードバックを活かした跡の2つです。何も変わらなかった月ほど、記録が空きます。「見直し実施、状態安定のため計画継続」の一行で足ります。記録に一言を足す工夫は日々の記録を指導に強くする残し方|あとで困らない一言の工夫が近いテーマです。

そして、算定した月と、記録の日付が対応しているか。ここは事務がいちばん見つけやすいところです。算定は続いているのに、直近の6か月の中に評価が見当たらない——この形が、あとで困ります。

もし、算定を間違えていたと気づいたら

読みながら不安になった方もいるかもしれません。先にお伝えしておきます。気づいた時点で直せます。

要件を満たしていない月に算定していたと分かったら、隠さず、事実を確認して、過誤申立と再請求で戻します。手順は過誤申立と再請求の流れ、あわてず順番に整理してみるに整理しています。自分たちで気づいて自主的に整えた記録が残っていることは、運営指導の場ではむしろ前向きに受け止められる材料になります。

逆のパターン——要件は満たしていたのに算定していなかった——も、実はよくあります。医師の評価も、多職種の計画も、日々の支援も行われていた。ただ、事務まで情報が来ていなかった。この場合は、さかのぼって算定できるかを保険者に確認する余地があります。まず、直近6か月分の評価票と支援計画が現場に残っていないかを見てみる。それだけの話です。算定が止まる典型的な理由は加算が算定できなくなる主なケースと、事務でできる予防策にまとめています。

影響:日々のケアが、外から見える形になる

ここを整えると、加算の金額以上のものが残ります。

現場の工夫が、記録として残ります。 声をかけてトイレへ誘導したこと、食堂まで一緒に歩いたこと、おむつを外せる時間帯を少しずつ広げたこと。ひとつひとつは当たり前に行われていることですが、計画と記録という形にすると、「なぜそうしたか」が引き継げるようになります。職員が代わっても、その方に合った支援が途切れにくくなる。これは加算とは別に、確かな価値です。

運営指導のときに、順番に示せます。 評価票 → 支援計画 → 実施記録 → 見直し → LIFE提出。この並びで出せるなら、説明にかかる時間はぐっと短くなります。準備の進め方は標準確認項目・標準確認文書を使って、運営指導の準備を軽くする、指摘が出やすいところは運営指導でよくある指摘から、普段の見直しどころを見つけるが参考になります。

改定があっても、差分だけ追えばよくなります。 単位数や区分の細目は動きます。でも「6か月で評価し、3か月で見直し、LIFEへ出す」という骨格は、そう大きくは変わりません。骨格が体になじんでいれば、改定のたびに読むのは変わったところだけで済みます。改定期の進め方は介護報酬改定に向けた準備スケジュールの組み方を一緒ににまとめています。

そして何より、この2つの加算が見ているのは、その方が自分でできることを、ひとつでも取り戻せるかという一点です。トイレで用を足せる。食堂で食事ができる。ベッドから離れて過ごす時間がある。それは、日々の暮らしの手ざわりそのものです。事務室で満期に印をつける仕事は、その手ざわりを支える仕事とつながっています。

明日やること(優先順位と代替)

  1. 自分の施設がこの2つの加算をどの区分で届け出ているか、体制届の控えで確認する(3分で終わります。ここが分かるだけで、聞かれたときの動きが決まります)
  2. 算定している方の名簿を、加算ごとに分けて書き出す(全員でなくて構いません。まず今いる対象者だけ)
  3. 1名分の記録を開いて、評価票・支援計画・見直しの日付を並べてみる(1名で流れがつかめます)
  4. 「次の評価月(6か月)/次の見直し月(3か月)」の列がある一覧表を、1枚だけ作る(列は8つ。手書きでも十分です)
  5. LIFEの提出状況を、その表に1列足す(済/未の2文字で足ります)
  6. 今月が満期の方の名前を、看護職員と医師の窓口に渡す(今日いちばん効くのはここです)
  7. 「変更なしのときも見直し記録を残す」を、次の会議で一度だけ共有する(言い方は「記録が空くともったいないので」で十分です)
  8. ほかのLIFE関連加算の満期も、同じ表に統合できないか検討する(すぐでなくて構いません。メモしておくだけでも次につながります)

全部を今日やらなくて大丈夫です。1と4だけでも、次に「この方、対象でしたっけ」と聞かれたときの足場ができます。

確認チェックリスト(持ち歩き用・最小ライン)

よければ、こちらも

一度に全部そろえなくて大丈夫です。届け出の区分を確かめる。次の評価月を書き出す。今月の満期を現場に渡す。この3つだけで、来月からの動き方が変わります。今日は、体制届の控えを開くところまでで十分です。

明るい食堂の窓辺で、椅子に座った高齢の女性利用者と介護職員、事務担当者が穏やかにほほえんで過ごしている場面

「この方、対象でしたっけ」と聞かれて答えられなかった日は、少し情けない気持ちになります。制度を扱う仕事なのに、と。

でも、聞かれたということは、現場があなたを頼りにしているということです。6か月と3か月という重なった時計を、誰かが一枚の表にして持っておく。その表があるから、評価が飛ばずに続き、支援が途切れずに回ります。トイレまで歩けた、食堂で食べられた——その小さな一歩の裏側には、満期に印をつけている人がいます。 今日、表を1枚つくったなら、それはもうその方の側に立っています。