介護施設の事務室で、褥瘡リスク評価の一覧表と卓上カレンダーを見比べ、次の評価月を確認している事務担当者

褥瘡マネジメント加算の要件と記録の残し方を一緒に整理する

「褥瘡ができてしまったので、今月の加算は止めておいたほうがいいですよね」

看護職員からそう言われて、請求ソフトの画面の前で手が止まる。止めるべきなのか、続けていいのか。止めて損をするのも困るけれど、算定して後から返すことになるのはもっと怖い。結局その月は、なんとなく止めてしまった——。

そんな夜を過ごしたことがあるなら、まず知っておいてほしいことがあります。褥瘡マネジメント加算は「褥瘡ができたかどうか」だけで決まる加算ではありません。 取り組みそのものを評価する区分と、結果を評価する区分が、はっきり分かれています。だから「発生した=一律に算定できない」ではないのです。ここを取り違えたまま運用すると、算定漏れにも過大算定にもつながります。今日は、その分かれ方と、事務が持っておくべき記録を一緒にほどいていきましょう。

結論:まず①この加算の中身は「評価 → 計画 → 見直し」を少なくとも3か月に1回まわし続けることで、その情報をLIFEへ提出してフィードバックを活かすところまでが一続きだと押さえる → ②取り組みを評価する区分(Ⅰ)と、褥瘡の発生がないことを評価する区分(Ⅱ)の分かれ方を、自分の施設がどちらで届け出ているかとあわせて確認する → ③利用者ごとに「前回の評価月/次の評価月/次の計画見直し月」を1枚の表で持つ、の順で整えると回ります。単位数・対象となるサービス種別・区分の判定の細目・LIFEの提出期限は改定や様式の更新で動くため、最終判断は最新の単位数表と厚生労働省の解釈通知、指定権者(自治体)の案内で確認してください(本記事は2026年8月時点の一般的な整理です)。

なぜ、ここでつまずきやすいのか

どれも、担当者の注意力の問題ではありません。周期の違う仕事が3本、別々に走っているだけです。走らせ方を決めれば落ち着きます。

その1:この加算が求めているのは「まわし続けること」

まず中身から。褥瘡マネジメント加算は、褥瘡を治すことを直接評価する加算ではなく、褥瘡ができにくい状態をつくるための一連の取り組みを、続けているかを見る加算です。求められているのは、おおむね次の流れです。

1. リスクを評価する

入所時に、その方に褥瘡の発生と関連するリスクがあるかを評価します。そのあとも、少なくとも3か月に1回、同じように評価し直します。「一度リスクなしと判定したら終わり」ではありません。状態は動くからです。

2. リスクのある方に、ケア計画を作る

評価でリスクありと判断された方について、多職種が共同して褥瘡ケア計画を作ります。看護・介護・管理栄養士・リハ職など、その方に関わる職種が入ることが前提です。体位変換、寝具やクッションの選び方、スキンケア、栄養、離床の時間——ばらばらに行われていた工夫を、1枚に集めるイメージです。

3. 計画に沿ってケアをして、見直す

作った計画のとおりにケアを実施し、少なくとも3か月に1回、計画そのものを見直します。状態が変わっていなくても、「見直して、変更なしと判断した」ことを記録に残します。何もなかった月ほど、記録が薄くなりがちです。ここは意識して残しましょう。

4. LIFEへ提出して、フィードバックを活かす

評価した情報を科学的介護情報システム(LIFE)へ提出し、返ってくるフィードバック票を、次の計画の見直しに活かします。LIFEまわりの運用の組み立て方は科学的介護推進体制加算(LIFE)、まず運用でつまずかないための整理にまとめています。

評価・計画・見直しの3つの場面を横に並べ、褥瘡マネジメント加算で3か月ごとにまわす流れを示した説明図
評価してリスクを見て、多職種で計画を作り、3か月ごとに見直す。この3つがつながっていることが要件の中心です

この4つがつながって回っていること。それがこの加算の中心です。逆に言えば、評価はしているが計画がない、計画はあるが3か月見直していない、記録はあるがLIFEに出していない——このどれか1本が切れると、要件を満たさないことになります。

なお、この加算が設定されているのは施設系のサービスです。自分の事業所が対象になるか、対象だとして今どの区分で体制を届け出ているかは、最新の単位数表と体制届の控えで必ず確認してください。体制届そのものの出し方は加算の体制届、出し方と提出期限を落ち着いて確認するに整理しています。

その2:(Ⅰ)と(Ⅱ)の分かれ方を、はじめに押さえる

ここが、冒頭の「褥瘡ができたから止める」につながる部分です。

この加算には区分があり、大きく言うと、

という分かれ方をしています。(Ⅰ)と(Ⅱ)は、同じ月に重ねて算定するものではありません。 どちらか一方です。

だから、褥瘡が発生したときに事務が確かめるべきなのは、「算定できるか/できないか」ではなく、「うちが算定しているのは(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらか」です。取り組みを評価する区分であれば、発生したという一点だけで一律に算定できなくなるわけではありません。逆に、結果を評価する区分であれば、そこは慎重に確認が要ります。

ただし、(Ⅱ)の判定を「いつの時点で・どの範囲の方を見て」行うかには細かい定めがあり、改定のたびに整理が入る部分でもあります。ここは覚えるのではなく、毎回、最新の解釈通知と自治体の案内を開くと決めてしまうほうが、結果的に早くて確実です。判断に迷う月は、看護職員と管理者に「この方は入所時の評価でリスクありでしたか」を確認したうえで、指定権者に照会するのがいちばん安全です。

事務として気をつけたいこと

看護職員から上がってくるのは、多くの場合「褥瘡ができました」というケアの事実です。それがそのまま算定の可否になるわけではないので、いったん受け止めたうえで、確認の一言を返しましょう。

「共有ありがとうございます。算定の判断で確認させてください。この方は、入所時のリスク評価ではどちらの判定でしたか。あと、今月の計画の見直しはお済みでしょうか」

責める確認ではなく、そろえる確認にする。これだけで、次の月から情報が上がってきやすくなります。

その3:3か月のリズムを、1枚の表に落とす

要件が分かっても、続かなければ意味がありません。ここが事務のいちばんの持ち場です。

利用者ごとに「満期」を持つ

作るのは、次の列だけの表で十分です。エクセルでも、手書きの一覧でも構いません。

氏名入所日前回の評価月次の評価月前回の計画見直し月次の見直し月LIFE提出(済/未)

ポイントは、「やった月」ではなく「次にやる月」を書く欄を作ることです。人は済んだことより、締切のほうを見て動きます。

月初に3分だけ見る

毎月の請求作業の前に、この表を開いて「今月が満期の方」を拾います。拾ったら、その名前を看護職員に渡すだけ。事務がやるのは、評価そのものではなく、評価の呼び水です。ここを引き受けると、現場の負担も実は減ります。「言われてから慌てる」がなくなるからです。

LIFEの提出も同じ表で追う

LIFEへのデータ提出には期限の考え方があり、提出できていなければ要件を満たしません。提出したかどうかを、算定の判断と同じ表で見るようにしておくと、「ケアはしたのに提出漏れ」を防げます。提出期限や様式の扱いは更新が入る部分なので、最新のLIFE関連のマニュアル・様式で確認してください。

ほかのLIFE関連の加算と、まとめて回す

褥瘡マネジメント加算は、単独で走らせるとかえって重くなります。同じ施設で算定していることが多い栄養マネジメント強化加算の要件と記録の整え方を一緒にや口腔・栄養スクリーニング加算|Ⅰ・Ⅱの違いと6か月管理を一緒に、排せつ支援に関する加算などと、満期の表を1枚に統合してしまうのがおすすめです。周期は加算ごとに違いますが、見る場所がひとつなら忘れません。月次で拾う流れそのものは加算の算定漏れを防ぐ月次点検のしかたを一緒に整理するにまとめています。

記録として残しておきたいもの(最小ライン)

運営指導で見られるのは、たいてい「要件のとおりに、実際にやっていたか」です。次のものがひとそろいで出てくれば、説明はかなり楽になります。

いちばん抜けやすいのは、「変更なし」の見直し記録とフィードバックを活かした跡の2つです。何も変わらなかった月ほど、記録が空きます。「見直し実施、状態安定のため計画継続」の一行で足ります。記録に一言を足す工夫は日々の記録を指導に強くする残し方|あとで困らない一言の工夫が近いテーマです。

そして、算定した月と、記録の日付が対応しているか。ここは事務がいちばん見つけやすいところです。算定はしているのに、その3か月の中に評価も見直しも見当たらない——この形が、あとで困ります。

もし、算定を間違えていたと気づいたら

書いていて怖くなった方もいるかもしれません。先にお伝えしておきます。気づいた時点で直せます。

要件を満たしていない月に算定していたと分かったら、隠さず、事実を確認して、過誤申立と再請求で戻します。手順は過誤申立と再請求の流れ、あわてず順番に整理してみるに整理しています。自分たちで気づいて自主的に整えた記録が残っていることは、運営指導の場ではむしろ前向きに受け止められる材料です。

逆のパターン——要件は満たしていたのに算定していなかった——も、実はよくあります。評価も計画も見直しもやっていたのに、事務まで情報が来ていなかった。この場合は、さかのぼって算定できるかを保険者に確認する余地があります。まず、直近3か月分の評価票と計画書が現場に残っていないかを見てみる。それだけの話です。算定が止まってしまう典型的な理由は加算が算定できなくなる主なケースと、事務でできる予防策にまとめています。

影響:ケアの積み重ねが、外から見える形になる

ここを整えると、加算の金額以上のものが残ります。

現場の工夫が、記録として残ります。 夜勤帯の体位変換、クッションの入れ方、食事の形態を変えた判断。ひとつひとつは当たり前にやられていることですが、計画と記録という形にすると、「なぜそうしたか」が引き継げるようになります。職員が代わっても、その方に合ったケアが途切れにくくなる。これは加算とは別に、確かな価値です。

運営指導のときに、順番に示せます。 評価票 → 計画書 → 実施記録 → 見直し → LIFE提出。この並びで出せるなら、説明にかかる時間はぐっと短くなります。準備の進め方は標準確認項目・標準確認文書を使って、運営指導の準備を軽くする、指摘が出やすいところは運営指導でよくある指摘から、普段の見直しどころを見つけるが参考になります。

改定があっても、差分だけ追えばよくなります。 単位数や区分の細目は動きます。でも「評価・計画・見直しを3か月で回す」という骨格は、そう大きくは変わりません。骨格が体になじんでいれば、改定のたびに読むのは変わったところだけで済みます。

そして何より、褥瘡は、ご本人にとって本当につらいものです。痛みがあり、眠りが浅くなり、食も細くなる。その手前で防ぐ取り組みを、記録という形で支えている。事務室で表に印をつける仕事は、ベッドの上の痛みを一つ減らす仕事とつながっています。

明日やること(優先順位と代替)

  1. 自分の施設が(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらで届け出ているか、体制届の控えで確認する(3分で終わります。ここが分かるだけで、褥瘡発生の報告を受けたときの動きが決まります)
  2. 直近1名分の記録を開いて、評価票・計画書・見直しの日付を並べてみる(全員は見なくて大丈夫です。1名で流れがつかめます)
  3. 利用者ごとの「次の評価月/次の見直し月」の表を、1枚だけ作る(列は7つ。今いる対象者だけで構いません)
  4. LIFEの提出状況を、その表に1列足す(済/未の2文字で十分です)
  5. 今月が満期の方の名前を、看護職員に渡す(事務がやるのは呼び水まで。ここが今日いちばん効きます)
  6. 「変更なしのときも見直し記録を残す」を、次の会議で一度だけ共有する(言い方は「記録が空くともったいないので」で十分です)
  7. ほかのLIFE関連加算の満期も、同じ表に統合できないか検討する(すぐでなくて構いません。メモしておくだけでも次につながります)

全部を今日やらなくて大丈夫です。1と3だけでも、次に「褥瘡ができました」と言われたときの足場ができます。

確認チェックリスト(持ち歩き用・最小ライン)

よければ、こちらも

一度に全部そろえなくて大丈夫です。区分を確かめる。次の評価月を書き出す。今月の満期を現場に渡す。この3つだけで、来月からの動き方が変わります。今日は、体制届の控えを開くところまでで十分です。

明るい居室の窓辺で、車いすの高齢の女性利用者と看護職員、事務担当者が穏やかにほほえんで過ごしている場面

「褥瘡ができてしまいました」という報告を受けた日は、気持ちが重くなります。防げたのではないかと考えてしまう。加算のことを考える自分が、少し嫌になることもあります。

でも、その報告が事務室まで届いているということは、現場と事務がちゃんとつながっているということです。評価をして、計画を立てて、3か月ごとに見直す。その積み重ねを表にして追いかけている人がいるから、ケアは途切れずに続きます。痛みを一つ減らす仕事は、ベッドサイドだけでなく、事務室の一覧表の上にもあります。 今日、体制届の控えを開いたなら、それはもうその方の側に立っています。