事務室で利用者一覧と職員の研修修了証の写しを並べ、認知症専門ケア加算の要件を満たしているかを確かめている介護事業所の事務担当者

認知症専門ケア加算Ⅰ・Ⅱの要件と、記録の残し方を一緒に整理

「うち、認知症専門ケア加算って取れないんですかね」。管理者からそう聞かれて調べ始めたものの、通知を開いた瞬間に手が止まった——そんな経験、ありませんか。

理由ははっきりしています。認知症がつく加算が、いくつもあるからです。認知症加算、認知症専門ケア加算、認知症チームケア推進加算、認知症行動・心理症状緊急対応加算。名前が似ているうえに、それぞれ対象も要件も違う。しかも通知の文章は「19を超えて10又はその端数を増すごとに」といった書き方で、読むだけで気力を持っていかれます。

でも大丈夫です。認知症専門ケア加算は、要件を3本の柱に分けてしまえば、意外と見通しが立ちます。今日はその3本を一緒に並べて、自事業所がどこまで届いているかを確かめるところまで進めましょう。

結論:認知症専門ケア加算は、①対象者の割合(認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の方が利用者の2分の1以上)→ ②研修修了者の配置(加算Ⅰは認知症介護実践リーダー研修、加算Ⅱはさらに認知症介護指導者研修)→ ③会議・研修と記録の3つで見ます。加算Ⅱは加算Ⅰの要件をすべて満たしたうえでの上乗せなので、まず①と②のリーダー研修から確認するのが近道です。なお単位数・対象サービス・研修の取り扱いはサービス種別や改定で変わるため、最終的な判断は最新の厚生労働省通知と指定権者(都道府県・市町村)の案内で必ず確認してください。

まず、どの「認知症」の加算の話かをはっきりさせる

調べ始めて混乱するとしたら、ほとんどはここが原因です。先に交通整理しておきましょう。

ここで一点だけ注意を。認知症チームケア推進加算と認知症専門ケア加算には、同時に算定できない組み合わせがあります。どちらを取るのが自事業所の実態に合うかは、要件と単位数を見比べての判断になります。併算定の可否は必ず最新の通知と指定権者の案内で確認してください。

「名前が似ていて分からなくなる」のは、あなたの理解が足りないからではありません。実際に似ているのです。まずここを分けられた時点で、半分は進んでいます。

加算Ⅰと加算Ⅱの関係——上乗せの構造

先に構造だけ押さえてしまいましょう。

つまり、(Ⅱ)だけを単独で取るという道はありません。(Ⅱ)を目指すなら、まず(Ⅰ)の3要件を固めるのが順番です。ここを取り違えて「指導者研修の修了者はいるから(Ⅱ)でいけるはず」と進めてしまうと、あとから戻ることになります。

単位数は、多くのサービスで(Ⅰ)が1日あたり3単位、(Ⅱ)が1日あたり4単位という小さな加算です。ただしサービス種別によって扱いが異なる場合があるので、金額は自事業所の単位数表・サービスコード表で確認してください(→ サービスコード表の見方と、単位数の確認手順を一緒に整理する)。

「3単位なら大したことないのでは」と思うかもしれません。ただ、これは対象者ではなく利用者ごと・日ごとに乗る加算です。仮に利用者40人・30日・(Ⅰ)3単位・1単位10円で計算すると、40人×30日×3単位=3,600単位、金額にして36,000円。年間では40万円を超えます(1単位あたりの単価は地域区分やサービス種別で変わるため、実額は自事業所の単価で計算してください)。小さく見えて、積み上がると事業所の体力に効いてくる規模です。

3本の柱で確認する

認知症専門ケア加算の要件を、対象者・研修修了者・会議と記録の3つに分けて左から並べて示した図
要件を3本の柱に分けると、どこが足りていないかが見えてきます。まずは左から順に、自事業所の現状を当てはめてみてください。

柱1:対象者の割合

利用者の総数のうち、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の方が2分の1以上であること。これが入口です。

認知症高齢者の日常生活自立度とは、認知症の方がどのくらい日常生活を自立して送れるかを、Ⅰ〜Ⅳ・Mの区分で表した目安です。要介護認定の認定調査票や主治医意見書に記載されています。Ⅲは「日常生活に支障をきたす症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする」段階にあたります。

事務としては、どこの数字を根拠にするかを決めておくのが実務のかなめです。認定調査票や主治医意見書に記載された自立度を根拠に、利用者一覧へ列を1つ足して管理しておくと、毎月の確認がぐっと楽になります。

柱2:研修修了者の配置

ここが、通知の日本語でいちばんつまずくところです。落ち着いて分解します。

加算(Ⅰ)では、認知症介護実践リーダー研修の修了者を配置します。必要な人数は対象者(自立度Ⅲ以上の方)の数に応じて決まります。

対象者の数必要な実践リーダー研修修了者
19人以下1人以上
20〜29人2人以上
30〜39人3人以上
40〜49人4人以上

通知の「20人以上の場合は1に、対象者の数が19を超えて10又はその端数を増すごとに1を加えた数」というのは、この表のことです。利用者全体の人数ではなく、対象者の人数で数える点に注意してください。ここは取り違えが起きやすい場所です。

加算(Ⅱ)では、これに加えて認知症介護指導者研修の修了者を1人以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導などを行います。

研修名でもうひとつ迷いやすいのが、実践者研修と実践リーダー研修は別物だということ。「認知症介護実践者研修は受けています」という職員がいても、(Ⅰ)の要件を満たすのは実践リーダー研修のほうです。修了証の名称を、目で確認しておきましょう。なお、看護職の認知症看護に関する一定の研修が該当として扱われる場合もあります。判断に迷ったら指定権者に確認するのが確実です。

そして現実の話をひとつ。これらの研修は都道府県などが実施していて、定員があり、受講までに時間がかかることも珍しくありません。「今すぐには要件を満たせない」という結論になったとしても、それは事業所の努力不足ではなく、単に順番待ちの問題であることが多いです。事務にできるのは、次回の募集時期を調べてカレンダーに置いておくこと。それで十分な一手です。

柱3:会議・研修と記録

加算(Ⅰ)では、従業者に対して認知症ケアに関する留意事項の伝達や技術的指導を行う会議を定期的に開催することが求められます。

加算(Ⅱ)では、これに加えて介護職員・看護職員それぞれについて認知症ケアの研修計画を作成し、その計画に沿って研修を実施していること(または実施予定であること)が必要です。

事務が押さえるのは、この2つを「やった証拠」として残す部分です。運営指導で見られるのはまさにここになります。

記録の残し方そのものに不安があるときは、日々の記録を指導に強くする残し方|あとで困らない一言の工夫 が土台になります。

割合と人数は「いつの数字」で数えるのか

要件を読めても、ここで手が止まる人がとても多い場所です。

体制に関する加算の割合・人数は、届出の際に前年度(3月を除く11か月)の平均、または届出日の属する月の前3か月の平均で算出するのが基本的な考え方です。開設から間もない事業所では前年度の実績が取れないため、前3か月で見ることになります。

そして大事なのが、届け出て終わりではないという点です。届出後も毎月、対象者の割合と研修修了者の配置状況を記録し続けます。直近3か月の平均が要件を下回った場合は、速やかに変更の届出(辞退の届出)を行う——これが原則です。

利用者の入れ替わりが多い事業所ほど、割合は動きます。だからこそ、月次点検の項目に1行足しておくのがいちばん確実です。届出そのものの段取りは 加算の体制届、出し方と提出期限を落ち着いて確認する、月次の点検の組み方は 加算の算定漏れを防ぐ月次点検のしかたを一緒に整理する にまとめてあります。

つまずきやすいところ

計算そのものより、その手前で迷いやすい場所を並べておきます。

どれも、知らないとハマるけれど、知っていれば避けられるものばかりです。要件を満たせなくなる場面の全体像は 加算が算定できなくなる主なケースと、事務でできる予防策 にも整理しています。

明日やること

一度に全部を整える必要はありません。明日は、この4つだけで十分です。

  1. 利用者一覧に「自立度」の列を1つ足す。認定調査票や主治医意見書から転記して、Ⅲ以上に印をつけます
  2. 対象者が利用者全体の何割かを数えて、メモに書き出す。2分の1に届いているかどうかだけ分かれば大丈夫です
  3. 職員の研修修了状況を確認する。実践リーダー研修・指導者研修の修了者が何人いるかを、修了証の名称ベースで数えます
  4. 足りない部分が分かったら、次回の研修募集時期を調べてカレンダーに置く

2まで進めば、その日はもう十分です。3以降は来週でも間に合います。

確認チェックリスト

よければ、こちらも

この加算を調べていると、途中で「うちはまだ届いていないな」と分かることがあります。少し気持ちが沈むかもしれません。

でも、要件を読み解いて自事業所の位置を確かめた——それは、今取れるかどうかとは別に、確かに前進です。研修の順番待ちは事業所の力ではどうにもならない部分ですし、対象者の割合は利用者さんの状態で動くものです。あなたが悪いわけではありません。

それに、この加算が見ているのは結局、認知症の方に事業所としてどう向き合うかという体制です。会議で留意事項を共有する。職員が研修に行けるよう調整する。その積み重ねは、加算が取れる日が来る前から、もう現場の助けになっています。

今日、3本の柱のうちひとつでも自事業所の数字が分かったなら、それで十分です。残りは、また来週の自分に任せましょう。

要件の確認を終えて資料をそろえ、事務室の窓から差す朝の光のほうへ顔を上げてほっとしている介護事業所の事務担当者